債務不履行とは

債務不履行とは、債務を負っている人が契約などで定められた義務を果たさない状態のことをいいます。
例えば、インターネット通販で商品を購入して代金を支払ったのに、商品がいつまでたっても届かない…というような場合には、お店側が債務不履行の状態になっています。
逆に、商品が先に届いたのに代金を支払わないというような場合には買い物をした側が債務不履行の状態になっているということになります。
以下、債務不履行の法律上の意味について詳しく見ていきましょう。

債務とは

債務とは、誰かに対して何らかの行動をとらなくてはならない法律上の義務のことをいいます。
例えば、お金を借りたら事前に決めた返済日までにそのお金を返す義務が発生しますが、お金を借りた側のこの日までにこの行動をとらなくてはならないという義務のことを債務と呼びます。

債務には、どのような契約をするかによっていくつかの種類に分類することができます。

例えば、ある人が他の人に対してお金を引き渡さなくてはならないという義務である「金銭債務」や、約束した品物を決められた日までに渡さなくてはならない「特定物債務」、あるいはお米を10キログラム、豚を10頭といったように商品の種類と量を指定して契約の義務の内容を決める「種類債務」といったものがあります。

不履行とは

不履行とは、法律上の義務(債務)が行われていない状態のことを言います。
簡単に言うと、約束をしたのに当事者のどちらかの責任によって約束通りの状態が達成されていないということですね。

具体的には約束の日までにお金を支払わないことや商品やサービスの納品を完了しない状態のことをいいます。
このような不履行の状態は話し合いなどの方法によって解決されるのが原則です。

例えば、居酒屋でお酒を飲んで、代金をつけ払いにしてもらったような場合には店主側からお客側に対して「お金を払ってください」と請求するなどして話し合いを行います。
お店側が法律的な権利を持っていると言っても、その都度裁判に訴えるようなことをしていてはお店の評判を落としてしまうことが考えられますし、そもそもそんなことをやっている時間はないかもしれません。
ですが、このような話し合いでは解決できない場合(お客側があくまでもお金を支払わないなど)には裁判所を通して訴訟を提起したり、内容証明郵便をおくったりといったように、法的な方法で解決が図られるのが一般的です。

債務不履行とは

ここまで説明させていただいた「債務」の意味と「不履行」の意味を組み合わせると、債務不履行とは「法律上の義務を約束通りに行わない状態のこと」を指すことになります。
ごく簡単に言うと、債務不履行というのは約束したことを約束した日までに行わないことです。

当然、約束は守られなくてはなりませんので当事者(約束をした人たち)間で話し合いや訴訟の形によって約束した通りの状態の実現に向けて努力していくことになります。
しかし、場合によっては当初約束した通りの状態が物理的に実現できる見込みがまったくないというケースも考えられます。
例えば、骨董品の売り買いを約束してお金を支払ったものの、売主側がその骨董品を引き渡す前に壊してしまったようなケースです。

壊してしまったものは引き渡しようがありませんので、この場合にはいったん契約を解除する(なかったことにする)ことが考えられます。
契約が解除になると当事者間に契約前の状態に戻す義務が生じますので、売主側が先に受け取っていた代金は買主側に返す義務が生じることになります。
このような「当初の契約で予定していた通りの状態が実現できない場合」に備えて、法律上はいくつか解決方法が用意されています。

これが法律上の債務不履行の規定(民法という法律に規定されています)が存在する意義です。
以下では、債務不履行の種類と、それぞれの債務不履行に対する解決方法について詳しく見ていきましょう。

債務不履行の種類

債務不履行には履行遅滞、履行不能、不完全履行と3つの種類が存在します。

それぞれの意味は読んで字のごとくですが、法律上の厳密な意味とこれらの状態が生じている場合の解決方法は異なるので注意しましょう。

ひとまず簡単にそれぞれの債務不履行の意味をまとめると以下のようになります。

履行遅滞は、約束の日までに履行が行われないことを指します。
履行不能は、物理的に約束通りの履行ができない状態を指します。
不完全履行は、履行は一応行われたものの、当初約束していた通りの量やクオリティに満たない場合のことを言います。

以下、それぞれの厳密な意味と解決方法について解説させていただきます。

履行遅滞

履行遅滞とは、本来やろうと思えば履行ができにもかかわらず、約束の期日が来ても債務の履行がお壊れない状態のことをいいます。
例えば、商品の売買契約を結んだ後に、約束の期日までに売主側が商品を引き渡さないような場合を言います。

履行遅滞の場合には、債権者側(上記の場合でいえば商品の買主)は履行請求、損害賠償請求、契約の解除の3つから解決策を選択することができます。
「履行請求」というのは決められた義務を果たすように債務者側に求めることをいいます。

契約上の義務について期日までに履行がない場合には、履行を行うように求めるのは当然のようですが、
法律上の債務不履行が成立する場合には、この履行の請求についても裁判所を通した法的な形をとることができるという意味があります。
「損害賠償請求」とは、債務者側が履行を行わなかったことによって生じた損害について金銭での補填(ほてん)を求めることをいいます。

例えば、上記の例で買主側が買った商品を転売して利益を出そうとしていた場合には、その利益の金額についても売主側に対して請求することが考えられます。
もう1つの「解除」については先にも少し触れましたが、簡単にいうと契約を最初からなかったことにすることです。

契約がなければ代金の支払義務もありませんから、買主側はお金をすでに支払っている場合には売主側にお金を返すように請求することができます。
また、契約の解除を選択したとしても損害賠償の請求ができなくなるわけではありません。
上記の例では買主側は契約の解除を行った上で、転売によって得られるはずだった利益についても追加で損害賠償を請求することができます。

履行不能

履行不能とは、売買契約で商品の引き渡しをする約束をしたものの、引き渡し前に売主の過失で商品が壊れてしまった場合のように、物理的に履行が不能になってしまった状態のことをいいます。
契約当事者の一方の過失によって履行不能が生じてしまった場合には、もう一方の当事者は相手方に対して損害賠償請求、契約の解除、代償請求(だいしょうせいきゅう)の3つから解決方法を選択することができます。
損害賠償請求と契約の解除については履行遅延のところで解説したのと同じ意味ですのでそちらを参考にしてください

代償請求とは、契約の当事者が履行不能になったことを原因として受け取ったものがある場合には、契約のもう一方の当事者がそのかわりに受け取ったものの引き渡しを請求できることをいいます。
代償請求については非常にややこしいので具体例で理解するのが良いです。

例えば、2人の人の間で自動車の貸し借りの契約を結んだものの、借主がその自動車を貸主に返すために運転中に事故に遭ってしまい、履行不能となってしまったような場合を考えます。
この時、自動車事故によって保険会社などから借主が保険金を受け取ったというような場合には、貸主側はその保険金のうち一定額を引き渡すように求めることができます。
このように、契約の目的物(この場合は自動車)が滅失してしまったことを原因として債務者側が受け取ったお金や物がある場合に、債権者側がそのお金や物への請求権を主張することを「代償請求」といいます。

不完全履行

不完全履行とは、債務者側が何らかの形で履行を行ったものの、当初の契約通りの量やクオリティが満たされていない場合をいいます。
例えば、商品10個の売買契約を結んだものの、実際に商品を引き渡してみたらそのうち4個が不良品で使い物にならなかったような場合をいいます。

不完全履行によって債務が完全に履行されない場合には、債権者側は損害賠償請求、契約の解除、さらに追完請求(ついかんせいきゅう)や瑕疵修補請求(かししゅうほせいきゅう)を行うことが考えられます。
損害賠償請求と契約の解除については履行遅延や履行不能のところで解説した内容と同じです。

不完全履行の場合、残りの債務について履行を行うことが可能である場合にはまだ果たしていない義務を果たしてもらって当初の契約通りの状態にしてもらうのが一番良い解決策でしょう。
例えば、上記の10個の商品引き渡しの例では不良品となっていた4個を交換してくれれば当初の売買契約通りの状態を実現することができます。
そのため、債権者側は不完全な履行となっている債務の残りの義務履行を債務者側に求めることができます。これを追完請求と呼びます。

最後の瑕疵修補請求については、例えば家の増築などを工務店に依頼したような場合で、計画通りに工事が完了しなかったような場合に、残りの工事を工務店側に求めることをいいます。
追完請求との違いがわかりにくいところですが、瑕疵修補請求では債務者側の過失がなくても履行の義務が生じる点で違いがあります。

過失責任の原則とは

法律上の債務不履行が成立するためには、債務者側に債務をおこたっていることについて「過失」が存在しなくてはなりません。
これを「過失責任の原則」と呼びます。

契約当事者が当初の契約の通りに義務を履行しない場合には外見上は債務不履行の状態となっていますが、この債務不履行状態が当事者の責に帰すべき事由によらずに生じた場合には、法律上の債務不履行に基づく義務(損害賠償義務など)は生じないことになります。
例えば、売買契約の売主が商品の引き渡しをするために車で運転中に、飲酒運転をしている他人の車が突っ込んできて車が大破し、商品も破壊されてしまったような場合です。

この場合、売主に落ち度はないので債務不履行による損害賠償請求などの義務は発生しないことになります。
このような当事者に「落ち度がない状態」のことを法律上は「過失がない」というように表現します。
法律上、債務不履行が成立しているというためには「当事者に過失があること」が必要条件になっています。これが過失責任の原則です。

債務不履行による賠償請求とは

法律上、債務不履行が認められる場合には、債権者は債務者に対して損害賠償を請求することができます。
例えば、お金の貸し借りをしている場合にはお金を貸す側が債権者、お金を借りている側が債務者となります。

もし債務者側が約束した返済期日までにお金を返済しない場合には、債権者は債務者に対してお金を返すように請求する(履行遅延に基づく履行請求)とともに、期日に遅れたことで生じる損害について損害賠償請求を行うことができます。
お金の貸し借りの場合、「遅延損害金」という名目で債務不履行に基づく損害賠償請求が行われるのが一般的です。
特に金融機関からの借り入れの場合、この遅延損害金については事前に利率を定められているのが普通です。

債務不履行と瑕疵担保責任・不法行為責任の違い

ここまで説明させていただいた通り、契約の義務が履行されない時には債権者は債務者に法律的な手続きをとることによって履行をせまることができますが、この履行を求める根拠としてはいくつか種類が考えられます。

1つ目はこれまでに説明させていただいた債務不履行に基づく履行請求です。

それ以外の方法としては開始担保責任に基づく請求、不法行為責任の追及が考えられます。
以下、瑕疵担保責任と不法行為責任について、債務不履行との違いに着目しながら解説させていただきます。

瑕疵担保責任とは

瑕疵担保責任とは、売買契約で売主側に当然に生じる責任のことをいいます(「当然に生じる」というのは契約書の内容に含まれていなくても生じるという意味です)
瑕疵担保責任は、売買契約を結んだ時に、その売買の目的となっているもの(商品)に一般の人では気づけないような「目に見えない欠陥」があったというときに発生します。

この「目に見えない欠陥」のことを法律上は「瑕疵(かし)」と呼びます。
売買契約の売主側は、この瑕疵が生じないように(すでに生じている場合には補填するように)買主側に一定の義務を負っています。

簡単に言うと、売主は得るものについて品質をきちんと保証しなくてはならないということですね。
この義務を売主が果たさず、瑕疵担保責任が生じる場合には、買主側は損害賠償請求や契約の解除を求めることができます。

債務不履行と瑕疵担保責任の違いは、瑕疵担保責任には過失責任の原則が適用されないことが挙げられます。
つまり、瑕疵担保責任が認められる場合には、買主側は売主側に落ち度がなかったとしても損害賠償や契約の解除を求めることができるということです。

そのため、債務不履行と瑕疵担保責任とでは瑕疵担保責任の方が買主側には有利ということができます。
実際の取引でトラブルが発生した場合には、買主側はまず瑕疵担保責任を追及できないかどうかを検討した上で、それが無理な場合には債務不履行責任を追及するといった形で売主に履行を求めていくことになります。

不法行為責任とは

不法行為責任とは、ある人が別のある人に対して故意(意図的に)や過失によって損害を負わせたときに負う責任のことをいいます。
不法行為責任の具体例としては、例えばある人が故意にある人を殴って怪我を負わせたようなケースが典型的です。

この場合、殴った人は殴られた人に対して治療費などを負担するという形で不法行為責任を負うことになります。
債務不履行責任と不法行為責任の違いは、事前の契約関係が当事者間にあるかどうかにあります。

債務不履行責任は事前の契約関係を前提としていますが、不法行為責任にいては契約関係がない当事者間の関係を規定するルールということですね。
この違いは、実際には「どちらに立証責任があるか」という違いが生じるため重要になります。

不法行為責任については被害を受けた方に立証責任があるのに対して、債務不履行については契約の債務者側に立証責任があります。
不法行為責任は訴える側に立証責任があるという点で債務不履行責任の追及よりも難易度が高くなると言えます。

そのため、債務不履行と不法行為の両方の責任が生じるようなケースでは、債権者側はまずは債務不履行に基づく損害賠償請求ができないかどうかを検討したのち、それが不可能な場合に不法行為に基づく損害賠償請求を追及していくという形をとるのが一般的です。

【番外編】債務不履行に対しての対処法

債務不履行がある場合の具体的な対処法についてわかりやすくまとめておきます。

債務不履行は具体的な状況に応じて以下の3つの状態が考えられます。
①履行遅延
②履行不能
③不完全履行

そして、それぞれの債務不履行に対しては以下のように対処法を選択することができます。

履行遅延の場合の対処法

履行の強制
損害賠償請求
契約の解除

履行不能の場合の対処法

損害賠償請求
契約の解除
代償請求

不完全履行の場合の対処法

損害賠償請求
契約の解除
追完請求
瑕疵修補請求

それぞれの対処法について、以下で具体的なケースを想定しながら解説させていただきます。

履行の強制

履行の強制は、裁判所を通して債務者に対して当初の契約通りの義務を果たすように求めることをいいます。
原則としては上記のように義務を積極的に果たすことを請求することになりますが、債務の性質によってはこのような請求の仕方が不適切な場合があります。

例えば、不動産の賃貸で家賃を払わない賃借人がいつまでも退去をしないような場合には物理的に賃借人を移動させるようなことは原則としてできません。
このような場合には「1日居座るごとにいくら」といったように賃借人側が自発的に立ち退くように仕向けることが有効と思われます。

また、上記の例で賃借人が自分の荷物を片付けないような場合も考えられます。
この場合には貸主が業者などに片付けを依頼し、そのためにかかった費用を後から賃借人に対して請求するといった形で履行の強制を行うことが考えられます。
このように、履行の強制といっても実際には債務の性質によって様々な形が取られる可能性があるのを知っておくと良いでしょう。

損害賠償請求

債務不履行に基づく損害賠償請求の具体例としては、先にも解説させていただいたように売買契約で売主が商品を引き渡さなかった時に買主側は転売ができなくなったことによって逃してしまった利益についても支払いを求めることや、お金の貸し借りで貸主側は遅延損害金を請求するケースが考えられます。

契約の解除

契約の解除は、債務不履行状態になっている契約について、当事者の意思によって「最初からなかったことにする」ことをいいます。

最初からなかったことにするということを法律上は原状回復と表現することがあります。

債務不履行によって契約が解除されると、当事者はお互いに原状回復義務を負うことになります。

例えば、アパートの賃貸で借主が家賃を支払わない時には貸主は債務不履行に基づく契約解除を求めることができますが、その場合には借主側はアパートを入居前の状態に戻す(原状回復する)義務が生じることになります。

なお、この原状回復を行うために当事者のどちらか(あるいは両方)に金銭的な損害が生じるような場合には、その損害についてお互いに金銭で補填する義務が生じることになります。

追完請求

債務不履行のうち、不完全履行が認められる場合には債権者側は追完請求を求めることができます。

追完請求とは不完全な状態になっている債務者の義務について、当初の契約通りの状態に達するように求めることをいいます。

例えば、健康な牛10頭を買主が売主から買うという売買契約をした場合で、引渡し日にはそのうち2頭が病気にかかっていたというようなときには、買主は売主に対して病気の2頭を健康な牛に取り替えるよう求めることができます。

瑕疵修補請求

瑕疵担保責任については不動産売買で問題となることが多いです。

マイホームを購入したけれど工事に手抜きがあって雨漏りがひどいと言ったような場合に、建築を依頼した工務店に対して住宅の修理や損害賠償を請求するようなケースが典型的な例です。

瑕疵担保責任では債務者側に過失があることが要件になっていません(債務不履行責任の場合には過失がなくては責任を追及できません)から、マイホームの買主は工務店側に落ち度があるかないかにかかわらず住宅の修繕や損害賠償を求めることができることになります。

債務不履行とは。意味や種類、不法行為との違いをわかりやすく解説しますのまとめ

今回は、債務不履行の法律的な意味と、実際に契約で債務不履行の状態に直面した時の対処法について解説させていただきました。

現代社会では個人間の約束事(契約)が社会の基本的なルールになっているため、一度同意した契約に違反する行為に対しては債務不履行として思いペナルティが課されることになります。

ペナルティの具体的な内容については本文で解説させていただいた通り損害賠償の義務が発生することや強制執行を受けてしまうことなどがありますが、普段の生活やビジネスにおいて、誰もが債務不履行をされる側になることはありますし、逆に債務不履行をしてしまう側になる可能性は常にあります。

いずれの立場に立つことになった場合でも、法律的な解決の方法について基本的な知識を持っておくことが大切です。

みんなのお金ドットコム(みんかね)とは

みんなのお金ドットコムでは、「お金のコトを身近に」をミッションに節税や保険、投資、ローン、クレジットカード、節約などお金に関する情報を正しくわかりやすく専門家や編集部から配信しています。
みんかねを通して、家計や資産形成などをはじめとするお金に関する事を能動的に考えて対処していくきっかけを作る事を目指しています。

著者情報

みんかね編集部

みんかね編集部

「お金のコトをもっと身近に」というミッションで、みんなのお金ドットコム(みんかね)を運営しています。
投資・節税・保険・ローン・クレカ・節約などのテーマの情報を各領域の専門家や編集部を通して記事配信していきます。