事業承継税制の最新動向

当初の経営者が2代目経営者に自社株を相続もしくは生前贈与をする場合、2代目経営者は相続税もしくは贈与税を納める必要がありますが、土地の地価が高い場合や資産が高額である場合は税率が高くなり2代目経営者は大きな負担を背負うことになります。
特に小規模企業・中規模企業に関してはこの負担が経営に大きく影響し、好景気時代には支払うことも可能でしたが、不景気の影響による不動産価値や業績低迷により税金を支払うことが厳しくなり、これまでの経営者が築いてきた事業を手放さざるを得ない企業も増えていました。
小規模企業・中規模企業が減っていくことは経済活性化の観点からみても決して良い傾向とは言えませんでした。

そこで小規模企業や中規模企業の事業存続をバックアップすることを目的に、自社株を相続する時または生前贈与を受ける時の負担を軽減するため、相続税または贈与税の支払を猶予もしくは免除される特例制度が平成20年10月にスタートしました。
その後も制度の改正は頻繁に行われており、直近では平成27年1月1日に改正が施行されました。
中小企業庁の統計によると平成28年3月末日時点で、認定を受けて納税が猶予されている企業は相続税が894件、贈与税は626件が受理されています。

事業承継、相続税の納税猶予と免除の特例について

中小企業の2代目経営者がこれまでの経営者から自社株の相続を受けた場合に認定を受けることで、相続税の80%の部分に対して税金の支払が猶予されます。
また相続を受けた人が死亡した場合や2代目経営者から3代目経営者に贈与された場合は税金の支払猶予が認定されていた相続税は支払が免除されます。

この制度では相続する経営者がもともと持っていた株も含めて株式総数の2/3以内と定められており、それを超える分についてはこの制度の適用を受けることが出来ません。

事業承継税制の改正ポイント

平成25年度に行われた税制改正により事業承継税制についていくつかの見直しが行われました。
改正される前は相続の認定を受ける時に経済産業大臣からの事前確認を受けておく必要がありましたが、平成25年4月1日に改正が施行されてからは事前確認なしでも認定されるようになりました。

ここ最近で一番新しい改正の施行は平成27年1月1日で、その変更内容は以下の通りです。

後継者に関する要件についての緩和

これまでは後継者は経営者の親族のみに限定されていましたが、親族以外の適任者でも後継者として認められるようになりました。

担保提供手続の簡素化による緩和

株券を発行していない会社が自社株を担保とする場合には、株券の発行をしなければなりませんでしたが、改正後は株券の発行をしなくても自社株の担保提供が認められるようになりました。

雇用確保要件についての緩和

毎年8割以上の雇用確保が条件となっていましたが、5年平均で8割以上を維持できていれば認められるようになりました。

納税猶予が打ち切りとなる場合のリスク軽減による緩和

税金の支払猶予が打ち切りとなる場合に支払わなければならない利子の税率が2.1%から0.9%に引き下げられ、相続または贈与を受けてから5年以上経っている場合は5年間の利子税については支払を免除されます。
また雇用確保ができずに税金の支払猶予が打ち切りとされる場合は延納もしくは物納も認められるようになりました。

納税猶予がすでに認められている相続税の支払免除について

経営承継期間が経過していれば民事再生計画の認可決定があった場合、税金の支払猶予が認められている税額の再計算と一部免除が認められます。

資産保有・運用型会社の制限を厳格化

これまでは上場会社の株式も税金の支払を猶予される税額の計算対象となっていましたが、総数の3%を超える株を上場会社が所有している場合は計算対象に入れることが出来ないよう変更されました。

事業実態要件の制限を厳格化

従業員の要件が相続人と同居する親族以外で判定されるようになりました。また相続人が関係者に貸付けをしている部分については貸付要件から除外されるように変更されました。

総収入金額の算定方法の変更による厳格化

総収入金額を算定する際に、受取利息や受取配当金などの有価証券利息、有価証券売却益、不動産賃貸料などの営業外収益は含まれません。
また不動産売却による利益や有価証券の評価利益などの特別利益は含まれません。

適用条件

①会社に関する要件は以下の通りです。
・経済産業大臣からの認定を受けた小規模・中規模企業であること
・上場会社ではないこと
・従業員が1人以上いること(外国会社が発行する株式等を持っている場合は5人以上)
・適用を受ける会社、またはその関係会社が風俗営業ではないこと
・資産管理会社は資産保有型会社また資産運用型会社に該当しないこと
・総収入金額が全くない、または従業員を雇っていない会社ではないこと
※総収入金額に営業外収益、特別利益は含まれません。

②相続人は、相続開始日の翌日から5か月後に会社の代表権を持っており、相続時に相続人とその関係者が、50%以上の議決権を持っており、尚且つ所有している株の数が最も多い筆頭株主であることが条件となります。

③経営者(被相続人)は、相続前に代表者だった人物で、相続直前に相続人またその関係者が、50%以上の議決権を持っており、尚且つ相続人を除いた関係者内において所有している株の数が最も多い筆頭株主であったことが条件となります。

猶予額と猶予期間

税金の支払が猶予される額は、2代目経営者が相続した財産が特例適用を受けている株式の80%に相当する金額となります。
猶予を受けることができる期間は相続税の申告から5年間は毎年、5年経過後は3年毎となりますので、相続税の納税猶予を受けるための「継続届出書」をその都度税務署に提出する必要があります。
継続書の提出をしなかった場合は、相続税を利子税と併せて支払わなければなりません。

利用上の注意点

相続税の申告は、経営者の死亡などにより相続開始を知った翌日から10か月以内に税務署に届出をする必要があります。
そして税金の支払を猶予してもらうためには経済産業大臣による認定が必要となっており、その認定は申告から2か月前後かかることがあるため期限に間に合うよう早めの手続が必要ですから、遅くとも相続後8か月以内には手続を開始しなければなりません。

また認定されなくなった場合や株式の譲渡があった場合などは、税金の支払猶予を受けていた税額と利子税を併せて納付しなければなりません。
相続した人が死亡した場合には猶予されていた相続税の全額もしくは一部が免除されます。

事業承継、贈与税の納税猶予及び免除の特例について

経営者が2代目経営者に自社株を贈与する場合にも一定の要件を満たしていれば贈与税の支払猶予が適用され、万が一経営者や2代目経営者が死亡してしまった場合は贈与税の全額もしくは一部が免除となります。

最新の改正ポイント

改正ポイントは相続税と概ね共通していますが、以下の項目は贈与税独自となっています。

役員退任要件について

経営者が贈与する際は、役員を退任しなくてはなりませんでしたが、代表者を退任することで有給役員として会社に残ることができるようになりました。

打ち切りリスクの軽減

雇用確保ができず納税猶予が打ち切りとなる場合は、延納を認められるようになりました。相続税で認められている物納は選択することができません。

適用条件

贈与税の支払猶予を受けるための手続きについても相続税と概ね共通しています。
①会社に関する主な要件は、相続税の支払猶予を受ける時に適用されるものと同じです。
②相続人は、会社の代表権を持っている人物で、年齢が20歳以上であること、役員等の就任から3年以上経過していること、贈与を受ける時点で後継者とその特別関係者が議決権総数の50%以上を持っており、尚且つ保有している株の数が最も多い筆頭株主となることが条件となります。
③経営者(被相続人)は、贈与前に代表者だった人物で、贈与を受ける時に代表権を持っていないこと、贈与を受ける前の時点で受贈者またその関係者が、総議決権数の50%以上を持っており、尚且つ後継者を除いた関係者内において保有している株の数が最も多い筆頭株主であったことが条件となっています。

猶予額と猶予期間

贈与税の猶予額は、特例の適用を受ける非上場株式等の価格から基礎控除(110万円)を控除した残りの額に贈与税の税率を計算した額となります。この非上場株式等は贈与時に発行されている株式のうち経営者と2代目経営者が持っている株数を合わせて2/3までが限度となります。2代目経営者がもとから2/3以上の株を持っていた場合は特例が適用されません。
猶予を受けることができる期間は相続税と同じで、贈与税の申告から5年間は1年毎、5年経過後は3年毎となり「継続届出書」をその都度税務署に提出しなければなりません。

利用上の注意点

贈与税の申告期限は贈与を受けた年の翌年2/1~3/15までとなっており、税務署に贈与税の申告をする必要があります。
また要件を満たさなくなった場合や適用を受けている株式を譲渡した場合などには税金の支払を猶予されていた税額の全額もしくは一部と利子税を納付しなければなりません。特に贈与税は税率が高いため猶予が打ち切られてしまうと高額の税金を支払わなければならないケースもあります。
経営者または贈与を受けた人が死亡した場合には猶予が認められていた贈与税は免除されます。また、2代目経営者が3代目経営者に自社株を贈与したときも贈与税は免除されます。

申請・更新手続き

申請の手続きには、特例の適用を受ける旨記載した相続税または贈与税の申告書と一定の書類を、申告期限までに税務署へ提出しなければなりません。
また手続き時には納税が猶予される相続税または贈与税と利子税の額に見合う担保の提供が必要となります。
更新の手続きは、特例適用を受ける旨と会社の経営に関する事項を記載した継続届出書を猶予期間の更新がされる年ごとに税務署へ提出する必要があります。

事業承継税制とは。改正のポイントや要件の緩和、注意点についてまとめ

事業承継を円滑に進めるためには事前に納税猶予の特例が受けられる条件の把握や対策が必要です。この制度は要件が細かい上に改正により変化します。認定を受けられなくなった場合には猶予が取消され高額な納税が必要となり、経営者にとっての大きな負担となり得ます。そのようなリスクを回避するには相続や贈与に関しての事前準備が重要なポイントとなります。改正などによる変化に対応できる、制度に精通した税理士に手続を依頼することも検討してみるといいかもしれません。

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