2017年03月06日

相続税申告時の手続きに必要な添付書類をケース別解説

目次

相続税申告時の必要添付書類について

相続税の申告の際、申告書のほかにいかなる書類を提出すべきか、税理士さんに頼んでしまえば担当の税理士さんの指示に従えばいいのですが、自分でやってみようという人にはなかなか大変な作業です。
自分でやってみようという方には、税務署に行って、「相続税の申告のしかた」という90頁くらいの冊子をもらってくることをお勧めします。
基本的には、これにしたがって、作業をすれば、申告書(及び添付すべき明細書)と添付書類はそろえられるようになっています。

「相続税の申告のしかた」によると、添付書類はわずかなものが記載されているだけです(特例の適用を受けようとする場合を除く)。
しかし、ホームページなどで調べると、この「相続税の申告のしかた」に記載されていない書類も添付するように勧めているものがほとんどです。

申告時の添付書類を規定する相続税法27条4項、これを受けた相続税法施行規則16条3項には、原則的には「相続の開始の日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の謄本で被相続人の全ての相続人を明らかにするもの」が挙げられているだけです(相続時精算課税適用者がある場合を除く)。

国民に「提出すべき義務がある」というには、法令に根拠があることが必須という原理原則論に立てば、その範囲の書類だけ添付しておけば問題はないはずで、実際にそのようにしている税理士さんもいるように聞いています。
しかし、大部分の税理士さんは、それ以外の書類も添付して提出しているようで、その場合には3センチぐらいの厚さの分厚い添付書類の束ができあがります。

前者は、法令に根拠がなければ提出すべき必要がなく、当局に必要以上の情報を与え、かえって、それを利用されて痛くもない腹を探られるのはごめんだ、という考え方と思われます。

一方、後者は、税務署の立場に立つと申告書だけではその内容が正しいかどうかを判断することができないので、後日、税務署からいろいろと資料の提出をお願いされる可能性が高まるのではないか、そうなると、それに対応するのが煩わしいことや、万一ミスがあって修正申告や追徴課税に進む場合に言い訳がしにくいことなどを考慮していると思われます。

法令上添付義務がなくても、いざ当局が国税通則法に基づく調査権を行使するときには、必要な資料の提出は義務化されるので、究極的には提出はしなくてはならなくなります。

添付書類に不備があった場合は?

法令上の添付書類に不備がある場合には、税務署は申告書を受理しないことができるでしょう。
事実上提出できてしまうこともあるでしょうが、後日税務署から不足する書類の提出を求められるでしょう。

不足する書類を提出しないまま申告期限を経過してしまえば、無申告扱いにされても文句は言えないことになります。
また、期限内の申告が要件とされている種々の特例の適用を受けられない恐れがありますので、特例を受けようとする場合には特に注意が必要です。

一方、法令上の添付書類以外であれば不備はあっても、税務署は受理しないわけにはいきません。そのまま何もないこともあります。
ただし、その後、必要があれば調査のため、書類を特定して提出を求めてくることがあります。

これに応じる法律上の義務はありませんが、当局が最終的に国税通則法上の調査権を行使するときには義務化され、その場合に当局の要求に対し、正当な事由なく応じない場合には処罰される可能性が出てきます(国税通則法74条の3、罰則:同法127条)ので、事実上当局の要求には応じざるを得ません。

相続税申告時の必要添付書類一覧

相続人ごとに必ず必要な添付書類

まず、必要なのはマイナンバーに関する書類です。
申告書にはマイナンバーを記載することが法令で義務(注1)とされています(相続税法27条1項、同法施行規則13条1項3号)。

個人番号利用事務等実施者である税務署(行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(以下「マイナンバー法」という。)9条、別表第一38号、財務省設置法4条1項17号、20条、23条、24条)がマイナンバーの提供を受けるときに本人確認の措置を取ることが法律上義務付けられている(マイナンバー法16条)ことから、番号確認書類と身元確認書類の添付(注2)が必要になってきます。

(注1) 税務署はマイナンバーの記載されていない申告書を受理しないこともできるのですが、混乱を避けるため受理することとしています(2017年3月3日現在、国税庁のホームページ)
https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/FAQ/gaiyou_qa.htm
(注2) 正確には、法律が要求するのは「提示を受ける」ことなので、税務署の窓口で提出する場合には添付しなくとも提示するだけでよいことになります。

本人確認書類

・下記書類のいずれか
マイナンバーカード(個人番号カード)【裏面】の写し
個人番号通知カードの写し
住民票の写し(マイナンバーの記載があるもの)

身元確認書類

・下記書類のいずれか
マイナンバーカード(個人番号カード)【表面】の写し
運転免許証の写し
身体障害者手帳の写し
パスポートの写し
在留カードの写し
公的医療保険の被保険者証の写し

用途:申告書に記載されたマイナンバーが正確かどうか、マイナンバーを提供しようとする者が本人であるかどうかの確認
根拠法令: マイナンバー法16条
部数:相続人1人につき上記1、2の中から1通ずつ

なお、被相続人については、申告書の被相続人のマイナンバーを記載することになりますが、その本人確認書類の写しは添付の必要ありません。

一般の場合

遺産の種類に関係なく、内容如何に関わらず、相続税の申告をする際に必要となる添付書類をご説明します。
特例の適用を受けようとする場合には、別途法令上必須となる添付書類がありますので、注意して下さい。

被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本(相続開始の日から10日を経過した日以降に作成されたもの)

用途: 相続人(申告すべき者)の特定
根拠規定: 相続税法27条4項、相続税法施行規則16条3項1号
部数: 各1通
取得先等: 被相続人の最後の本籍地の市町村役場で、被相続人が死亡により除籍された旨の記載のある戸籍(除籍)謄本を取り寄せます。その記載をたどって、被相続人の出生まで遡って、戸籍(除籍)謄本を取り寄せます。

※途中で本籍地が変わっているときは、その本籍地の市町村役場で取得します(郵送による申請が可、詳しくは各市町村のHPなどをお調べ下さい。)
相続人が配偶者と子だけのときは、たいていこれだけで必要な戸籍の謄本は揃いますが、代襲相続の場合、尊属や兄弟姉妹が相続人になる場合には、必要に応じて、さらに戸籍等の謄本を揃えることが必要になってきます。

遺言書の写し又は遺産分割協議書の写し

用途:相続財産を取得した者(申告すべき者)及び、各人の取得財産の内容の特定
根拠規定:なし
部数:1通
取得先:お手元

公正証書遺言については、全国の公証役場におけるその存否に関し、最寄りの公証役場で調査してもらえます。その他の遺言書は家庭裁判所の検認を受けることになっています(民法1004条)ので、申告前に手続きをしておきましょう。

相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)

用途:遺産分割協議書の成立の真正の確認
根拠規定:なし
部数:各1通
取得先:各相続人の住民登録先の市町村役場

相続時清算課税適用者がいる場合には、次の書類

被相続人の戸籍の附票の写し(相続開始の日以後に作成されたもの)

用途: 被相続人の住所地の変遷の確認
根拠規定: 相続税法27条4項、相続税法施行規則16条3項2号
部数: 1通
取得先:被相続人の最後の本籍地の市町村役場

相続時精算課税適用者の戸籍の附票の写し(相続開始の日以後に作成されたもの)

用途:相続時精算課税適用者の住所地、すなわち、同人の贈与税申告を受け付けた税務署の検索
根拠規定: なし
部数:各1通
取得先:相続時精算課税適用者の本籍地の市町村役場

不動産を相続する場合に必要な添付書類

登記事項証明

用途:当該不動産の特定、相続開始時の所有権等の権利関係の確認
根拠規定:なし
部数:土地、建物等、不動産ごとに各1通
取得先:不動産の所在地を管轄する法務局(土地については所在、地番、建物については所在、家屋番号が明らかであれば、管轄外の法務局でも取得可)

固定資産評価証明書

用途: 建物について、当該建物の評価額の確認
未登記建物については、当該建物の特定
倍率地域の土地について、当該土地の評価額の確認

根拠規定:なし
部数:建物ごとに各1通
取得先:建物の所在地の市町村役場

地積測量図、公図、実測図

用途:土地について、適用される路線価を割り出すため
根拠規定:なし
部数:土地ごとに各1通
取得先:地積測量図は土地の所在地を管轄する法務局に残されている場合があります。公図は必ずありますが、土地の寸法は記載されておらず、まれに実際の土地とはかけ離れた形になっていることがあります。実測図は、土地の売買契約書や重要事項説明書に添付されていることがあります。

路線価図、評価倍率表

用途:土地について、当該土地の評価額の算出のため
根拠規定:なし
部数:1通
取得先:税務署、または国税庁HP

賃貸借契約書(借地、借家)

用途:当該不動産について賃貸借契約がある場合には評価額が減額されるため、その確認
根拠規定:なし
部数:各1通
取得先:お手元

株式(上場、非上場)・金融商品、現金預金、生命保険、退職金を相続する場合に必要な添付書類

株式(その他金融商品を含む)の証券会社等による預かり証明書

用途:当該金融商品の銘柄、数量の確認
根拠規定:なし
部数:各1通
取得先:お手元、証券会社等

配当通知書

用途:当該金融商品の銘柄、数量の確認
根拠規定:なし
部数:各1通
取得先:お手元

非上場株式

・法人税の申告書一式
・株主等名簿
・法人所有の財産があれば、被相続人所有の財産についてと同様の書類
用途:当該非上場株式の評価の根拠の確認
根拠規定:なし
部数:各1通
取得先:お手元

預貯金

・通帳の写し、残高証明書等
用途:当該預貯金の残高の確認
根拠規定:なし
部数:各1通
取得先:お手元、金融機関

生命保険

・保険証券、支払保険料計算書、保険金支払報告書
用途:当該生命保険の契約者、保険料負担者、保険金受取人、保険金額等の確認
根拠規定:なし
部数:各1通
取得先:お手元、生命保険会社

退職金

・退職金の支払調書、取締役会議事録等
用途:当該退職金の金額の確認
根拠規定:なし
部数:各1通
取得先:お手元、被相続人の勤務先

債務・葬式費用に関する添付書類

被相続人の債務(公租公課、私人に対するもの)、および厳密には被相続人の債務ではありませんが、被相続人の葬式等にかかった費用は、相続財産から控除できます。

債務

・納税通知書、請求書など
用途:当該債務の額の確認
根拠規定:なし
部数:各1通
取得先:お手元、被相続人の債権者

葬式費用

・領収書、請求書など
用途:当該費用の額、支払先の確認
根拠規定:なし
部数:各1通
取得先:お手元、葬儀業者など

その他の財産を相続する場合に必要な添付書類

貸付金、未収金等の債権

・借用証書、残高確認書など
用途:当該債権の評価額の確認
根拠規定:なし
部数:各1通
取得先:お手元、被相続人の債務者

ゴルフ会員権、レジャークラブ会員権等

・会員証など
用途:当該会員権の内容及び評価額の確認
根拠規定:なし
部数:各1通
取得先:お手元

特例を利用する場合に必要な添付書類

小規模宅地等の特例を利用する場合

・被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本(相続開始の日から10日を経過した日以降に作成されたもの)
一般の場合で説明したとおりです。重複する場合には重ねて提出する必要はありません。

・遺言書の写し又は遺産分割協議書の写し
 一般の場合では、根拠規定はないと説明しましたが、この特例を受けるためには法令上の根拠があります。すなわち、特例の適用を受けるためには、対象となる宅地が、共同相続人間で分割されていなければなりません。その確認のために必要とされます。租税特別措置法69条の4第6項、同施行規則23条の2第8項1号ハ
重複する場合には重ねて提出する必要はありません。

・相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)
一般の場合で説明したとおりです。重複する場合には重ねて提出する必要はありません。

・申告後3年以内の分割見込書(申告期限内に分割ができない場合)
用途:分割が終了していない場合でも、なお、申告期限後3年以内に分割できた場合には適用があります(租税特別措置法69条の4)。その状況を証する書類として提出義務があります。
根拠規定:租税特別措置法69条の4第6項、同施行規則23条の2第8項1号ハ
部数:1通
取得先:お手元(共同相続人間で作成します)

小規模宅地等の特例のうち、特定居住用宅地等に該当する宅地等の場合

・特例の適用を受ける宅地等を自己の居住の用に供していることを明らかにする書類(住民票の写し等)
用途:特例の要件を満たすことを証明するため
根拠規定:租税特別措置法69条の4第6項、同施行規則23条の2第8項2号ロ
部数:1通
取得先:住所地の市町村役場
特例の適用を受ける人がマイナンバーを有する場合には提出不要です。また、特例の適用を受ける人が、被相続人の配偶者である場合も提出不要です。

被相続人の親族で、相続開始前3年以内に自己又は自己の配偶者の所有する家屋に居住したことがないことなど一定の要件を満たす人が、被相続人の居住の用に供されていた宅地等について特例の適用を受ける場合

・相続開始前3年以内における住所又は居所を明らかにする書類(住民票の写し等)
用途:特例の要件を満たすことを証明するため
根拠規定:租税特別措置法69条の4第6項、同施行規則23条の2第8項2号ハ
部数:1通
取得先:住所地の市町村役場
 特例の適用を受ける人がマイナンバーを有する場合には提出不要です。

相続開始前3年以内に居住していた家屋が、自己又は自己の配偶者の所有する家屋以外の家屋であった旨を証する書類(建物の登記事項証明書等)

用途:特例の要件を満たすことを証明するため
根拠規定:租税特別措置法69条の4第6項、同施行規則23条の2第8項2号ニ
部数:1通
取得先:建物の所在地を管轄する法務局

被相続人が亡くなる当時、老人ホームに入所したりして、特例を受けたい土地に住んでいなかったときには、そのままでは特例を受けられません。さらに添付すべき書類があります。しかし、煩雑なので、詳細は税務署、税理士などにご相談下さい。

また、被相続人が行っていた事業に使われていた土地、一定の同族会社の事業に使われていた土地についての評価の特例もありますが、この点も、別途ご相談下さい。

取得先別、必要添付書類早見表

・相続人の住んでいる地の市町村役場
マイナンバーカード
住民表の写し
印鑑証明書

・被相続人の本籍地の市町村役場
除籍(戸籍)の謄本
戸籍の附票(相続時清算課税の適用者がいる場合)
被相続人の所有建物の固定資産評価証明書

・相続人の本籍地の市町村役場
戸籍の附票(相続時清算課税適用者のみ)

・税務署
路線価図、評価倍率表

・法務局
不動産登記事項証明書
地積測量図、公図
 
・公証役場
公正証書遺言

・家庭裁判所
公正証書遺言以外の遺言について、検認の申立をし、検認を受けた遺言書

ケース別相続税申告時の手続きに必要な添付書類のまとめ

税務署は、相続によって、誰が、どのような財産を取得したのかを把握したいわけです。
したがって、相続人を明らかにするために、戸籍の謄本がまず必要になるのです。法令上、その提出は義務付けられています。
これは、法定相続人の人数によって、基礎控除額が変化するなど税額に直結すること、もともと公的機関が把握している事実関係であることから、プライバシーへの影響も少ないことを考慮しているものと考えられます。

次に、税務署は、被相続人が、相続人以外に遺贈した場合には、受遺者も相続によって財産を取得するので、受遺者にも相続税の申告義務が生じることから、遺言書があればそれも見たい、となります。
また、個々の相続税申告義務者がそれぞれ納付すべき相続税の額を決定するに当たっては、各自が取得した財産の価値が問題になります。
そこで、遺産分割協議書があればそれも見たいとなります。

遺言書や遺産分割協議書は、特例の適用を求めない場合には、法令上の提出義務はありません。
遺言書や遺産分割協議書には財産関係の帰属以外にもさまざまな記載がされることがあり、場合によっては必要以上にプライバシーを侵害する可能性があること、申告書を作成すれば、その存否、内容は自ずと明らかになるので、申告納税方式をとる以上、そこまで義務化しなかったのだと思われます。

税務署が次に関心があるのは、相続財産を構成する個々の資産にはどのようなものがあり、それが正しく評価されているかという問題です。これについては、法令では財産の種類毎の評価の基準を定めているだけで、評価自体は申告者各自に委ねています。

財産の評価に関しては、国税庁のタックスアンサー などでその概要を知ることができます。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/hyoka/zaisan3.htm

申告書には、個々の財産を特定するに必要な事項を記載することになっていますが、なぜそのように評価したのかについての資料の提出までは法令上義務付けられていません。
申告納税方式を採用して、申告者の自主性を尊重したものと考えられます。
ただ、税務署の知りたいことは全部教えて上げればいいではないか、という立場に立てば、申告書には、財産の評価額を一つ一つ記載するわけですから、そのために必要になった書類を全部添付すればいいではないかということになります。

なお、税務署は、被相続人の遺族に対して、「相続税の申告のためのチェックシート」を郵送しています。
下記のURLからも入手できます。
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku/checksheet2015/pdf/28-01.pdf

ここで述べた以外にも、さまざまなケースごとにさまざまな書類を検討する必要があることが分かります。
全てのケースを網羅的に、添付書類をもれなくリストアップすることは実際には困難です。
すでに述べたタックスアンサーにより財産評価の考え方を理解し、このチェックシートを見比べ、最初に触れた「相続税の申告のしかた」に沿って、相続税の申告書を作成していけば、ほとんどのケースで、申告書、添付書類は準備できると思います。

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