2017年05月01日

【専門家記事】日常生活に密接なinsurtech(インシュアテック)

目次

前回、不動産テックの最新状況をお伝えしました。

今回は保険についてです。
保険×Technologyは、どのような構図が生まれているのでしょうか。保険もまたTechnologyの導入によって利用者のメリットとなる部分が多く、実際に保険分野の革新的な動きは既にインシュアテック(Insurtech)という名称がついています。インステックと呼ばれることもあります。

Technologyと親和性の高い「損害保険」


保険は大きく分けて「生命保険」と「損害保険」がありますが、現状Technologyと親和性が高いのは後者の損害保険です。そのなかでもインターネットを活用して、保険加入者自体が手続きを能動的に進められる「家財保険」が注目を浴びています。

家財保険とは、家財に破損や汚損があったとき、補修費を保険金が担う保険のこと。まずは、この分野の先進事例といえるアメリカの状況を見ていきましょう。

Insurtech注目のレモネード社

Insurtechのなかで注目したいのはアメリカの「レモネード社」です。なんと甘そうな名前ですね。レモネード社はインターネットを活用して、保険対象を家財に絞った損害保険の会社です。敢えて日本の損害保険の枠に当てはめると、家財は火災保険や地震保険のなかの保障対象の一部というところ。

なお、最近はミニ保険(少額短期保険)で家財単体にスポットを当てる保険会社も増えてきましたが、日本で定着している多くのビジネスモデルともレモネード社は異なります。特筆すべきは保険金支払いまでのスピードです。

レモネード社には損害の確認をする判定人はおらず、「スマホ(スマートフォン)ですべてが完結する」という点が大きな特徴です。

通常、家財保険というと破損した家財を建築士などの専門家が確認し、「全損・半損・一部損」など壊れ方や破損の規模を判定し、一定の時間をおいて保険金が振込などで加入者のもとに届くという一連の流れでした。

レモネード社は人工知能を活用した自動応対(Chatbot)を活用し、スピーディな保険料支払の流れを可能としています。これは既存の家財保険とはまったく異なるものですね。主な違いを下記の一覧にまとめます。

レモネード社と既存の家財保険の違い

・保険金が支給されるまでのスピード
・人的コストが異なることによる保険料の安さ
・専門家のチェックや振込を介さないことによる手軽さ

参考:レモネード社

Insurtechを理解するのに不可欠な「マイクロ保険」という考え方


インターネットを活用したInsurtechの新興勢力はレモネード社に限りません。次々と保険会社が生まれる背景を理解するのには、「マイクロ保険」の考え方が不可欠です。

マイクロ保険とは、インターネットの拡大で様々なモノが保険対象として見直されるようになって生まれた考え方のこと。

アメリカの保険会社も傾向がありますが、特に日本の大手保険会社は新規ビジネスを行うにあたって「スケーラビリティ」という考え方を重視します。スケーラビリティとは保険商品の開発費用、新商品を告知するための広告費用にとどまらず、実際の保険金支払いや保守にも費用がかかります。これらを支払うと考えても史上に価値があるかどうかの考え方のこと。

一つの保険商品にはその費用をペイするため、一定数の加入者数が必要となることに加え、大きな市場が見込めない分野への保険には進出することができません。その部分のニーズを上手に掴んだものが、マイクロ保険です。

たとえば旅行に行くときにスーツケースを登録する保険があります。空港に預けて旅行先で開いて、持ち歩いて、荷物を詰め替えて自宅に持ち帰るまでのあいだに限り、保険の対象になり、その使用頻度に合わせて保険料が測定されます。

やはりアメリカの会社になりますが、現在代表的な企業はTrov社や、マイクロ旅行保険を扱うSure社が代表的です。

日本のInsurtechはこれから


Insurtechについて日本では、なかなか浸透しないと言われています。理由はいくつかありますが、保険ビジネスは免許であり、新規参入がとても難しいのは大きな理由です。

約10年前の2006年にインターネットを活用したライフネット生命が創立された際、なんと戦後初の保険会社設立として大きく報道されました。

既存の保険会社は前項にてお伝えしたスケーラビリティを重視するため、潜在市場の大きさもわからない新分野には手を入れられにくいのでしょうか。

この部分、最近は新たな動きが見えます。業界の常識に捉われない斬新なアイデアを持ったベンチャー企業に対して、大手保険会社は「出資」をすることによって急成長を後押しします。

支援を受けたベンチャー企業は成長著しい企業としてスタートアップと呼ばれ、ブレークして出資元の期待に応えていきます。これは生命保険に限った話ではなく、事業会社やベンチャーキャピタル(VC)も同様の視点で支援活動を進めています。

このように斬新なアイデアに対して、支援体制が整っていけば、Insurtechを後押しすることに繋がります。その視点で考えると日本のInsurtechはまさにこれからです。

そして、Insurtechを単純に「保険」と限定するのは機会損失。不動産取引にとっても、相続にとっても、保険は密接に関わっています。

大切なのはあらゆるサービスや既存の保険会社と連携して生み出されるモノが、消費者の方をきちんと向いていることです。今後、更に日常生活に密接な存在となるInsurtechに注目していきましょう。

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FP-MYS代表取締役社長兼CEO。 ファイナンシャルプランニング(FP)を通じ、Fintech領域のリテラシーを向上させたい個人や、FP領域を活用してFintechビジネスを検討する法人のアドバイザーやプロダクト支援に携わる。 Fintechベンチャー集積拠点FINOLAB(フィノラボ)入居。執筆実績多数。
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