たらこ・明太子・辛子明太子は同じもの?
たらことは
「たらこ」は「鱈の卵巣を塩づけにした食べ物」ですが、主に「介党鱈(すけとうだら)の卵巣の塩づけ」を言います。
介党鱈は鱈の一種ですが、日本の水辺にはいません。
日本ではもともと「たらこ=真鱈の卵巣を塩づけにした物」だが、現代では「たらこ=介党鱈の卵巣の塩づけ」と考えるのが一般的です。
また、日本では古く、真鱈の卵巣の塩づけを「たらこ」と言ったため、真鱈の卵巣を塩づけにした物も含めて「たらこ」を言う場合も多いです。
食品名についてですが、「たらこ」は嘗て「鱈の子」の名でした。
その「鱈の子」から「の」が抜けて少し短縮された名が「たらこ(鱈子)」であり、いつの間にか「鱈の子」より「たらこ」の方がよく用いられるようになっていたそうです。
明太子とは
「明太子」は、「介党鱈の卵巣を塩づけにした食べ物」を言います。
そう、「たらこ」も「明太子」も、「介党鱈の卵巣を塩づけにした物」です。
つまり、同じ物を指しているわけですが、なぜ「たらこ」を「明太子」と言う風習があるのか?以下に説明します。
まず、「明太子」の語源は朝鮮語であり、朝鮮語で言う「明太(みょんて)」は「介党鱈」を意味します。
そして、「介党鱈の卵巣=子」と連想して、組み合わせた言葉が「明太子」です。
鱈の卵巣の塩づけや塩づけ前の生を明太子と言うのは、福岡など限定的な範囲のみであるため、方言性の強い呼び方です。
辛子明太子も同じ?
辛子明太子は、「鱈の卵巣を塩づけ(たらこおよび明太子)にした物をカラシに浸けた物」です。
福岡で辛子明太子を生み出した人が、当時朝鮮だった地域に所縁(ゆかり)ある人物のため、福岡などでは「明太子」と言いますが、「たらこ」と呼ばれる物と「明太子」と呼ばれる物は同じ物なので、どちらでもカラシで浸ければ辛子明太子です。
「からすみ」も「たらこ」や「明太子」と混同されやすい傾向にありますが、全くの別物です。
「からすみ」は「鰡(ボラ)の卵巣を塩づけにした物」であり、「たらこ・明太子」は「鱈の卵巣を塩づけにした物」なので、魚の種類が違っています。
たらこと明太子の違い
では、「たらこ」「明太子」の違いをみていきましょう。
「たらこ」「明太子」には、以下の違いがあります。
- 語源
- 地域
- 歴史
- 原料
- 辛子
続いて、それぞれの「違い」について詳しくみていきます。
たらこ・明太子の違い①語源
「たらこ」は、日本語で言う「鱈の子」を語源としており、その「鱈の子」を少しだけ短縮したのが「たらこ」です。
「明太子」は、朝鮮語で言う「明太」を語源としており、そこに「(卵巣から連想した漢字)子」を組み合わせて完成したのが「明太子」です。
もともと、日本で言った「鱈」は「真鱈」のことであり、「明太」は「介党鱈」のことでした。
そのため、歴史的には「たらこ」は「真鱈の卵巣を塩づけにした物」、「明太子」は「介党鱈の卵巣を塩づけにした物」になりますが、特に区別はされていません。
たらこ・明太子の違い②地域
日本では基本的に「鱈の卵巣を塩づけにした物=たらこ」だが、辛子明太子の影響が強い福岡などでは「鱈の卵巣を塩づけにした物=明太子」です。
そのため、福岡や一部西日本ではレシピ名も「明太子パスタ・生明太子・焼き明太子など」となり、他の地域では「たらこパスタ・生たらこ・焼きたらこなど」となるのが普通です。
たらこ・明太子の違い③歴史
「たらこ」の存在は、最も古いもので1696年の書物にあります。
少なくとも、江戸時代前期には既に食用であったそうです。
しかし、1903年に北海道で真鱈の漁獲不振があってからは、代わりに介党鱈の漁獲が発展します。
介党鱈の漁獲発展により、魚卵加工が開始されたことで「たらこ」が地元に出回り、次第に全国各地へも広まり始めたと言われています。
「明太子」の名には、辛子明太子の歴史が深く関係しています。
辛子明太子が完成した年は不明ですが、1948年頃から開発研究は行われていた可能性があるそうです。
1960年代には、初代辛子明太子のレシピを覚えた辛子明太子の同業者が増加しました。
そのことを踏まえると、1948年~1960年までには辛子明太子の完成・商品化・販売・人気の獲得・レシピ普及が為されていたと推測できます。
たらこ・明太子の違い④原料
もともと「たらこ」は「真鱈の卵巣を塩づけにした物」のことで、「明太子」は「介党鱈の卵巣を塩づけにした物」のことでした。
しかし、北海道で起きた真鱈の漁獲不振により、介党鱈の漁獲や卵巣加工が発展して、その加工品が全国各地に普及し、その後辛子明太子が世に知られるようになった歴史の流れから、全国的に「鱈の卵巣を塩づけにした物=たらこ」とするのが基本なのです。
福岡などが「鱈の卵巣を塩づけにした物」を「明太子」と言うのは、辛子明太子の普及率の高さが理由です。
辛子明太子は「鱈の卵巣を塩づけにした物をカラシに浸けた食品」であり、まだカラシで漬けてない物は「辛子」の語を抜いた「明太子」と呼んでいたため、「たらこ」と言う風習が無いのです。
たらこ・明太子の違い⑤辛子
辛子に漬けた「たらこ」は基本的に辛子明太子であり、「辛子たらこ」になることはまずありません。
大体が辛子明太子になり、基本「たらこでも明太子でもカラシに浸ければ辛子明太子」です。
たらこと明太子の違いが生まれたきっかけは?
ほとんど日本人は「たらこ」の語を使うので、「明太子」を辛子明太子の略だと誤解している人が多いです。
「たらこ」と言う物と「明太子」と言う物は、同じ物(鱈の卵巣の塩づけ)を指しているのですが、なぜ辛子明太子の省略形という誤った認識があるのか?その理由には、普及の仕方が関係しています。
古くから日本国内にあった「鱈の卵巣を塩づけにした物」は「たらこ」であり、全国各地に普及したのも「たらこ」でした。
しかし、福岡などでは辛子明太子が普及しており、まだ辛子につけてない物は「辛子」を省いた「明太子」と言っていました。
現代では、使い方に際してゴチャゴチャしていると言えますが、本来「明太子」は福岡などの方言のようなものです。
そして、全国的・標準語的には「たらこ」であり、「明太子」は辛子明太子の略ではなく、「たらこ」を意味する地域性強い呼び方だと考えましょう。
辛子明太子の発祥は?
辛子明太子を開発したのは、今も尚、辛子明太子で有名な福岡の「ふくや」創業者である川原俊夫さんです。
1913年に当時朝鮮であった釜山市出身で、日本人向けに海産物などを販売しながら海運業を営んでいた川原回槽店に生まれました。
それから時が流れて太平洋戦争が起き、川原さんも出兵して、終戦後は福岡に引き揚げてから中州市場へ移住し、奥さんの勧めで「ふくや」を創業しました。
初めは店舗向けに食料品を販売する卸商店としての営業が主でしたが、川原さん自身はオリジナル商品を販売したいと考えていたそうです。
川原さんは1948年に釜山へ行き、「明太(介党鱈)」の卵巣を辛子に漬けた「明卵漬(みょんらんじょっ)」を食べて感銘を受けました。
日本に帰国した川原さんは「明卵漬」の記憶を頼りに辛子明太子を開発し始め、1960年代には同業者も増え、辛子明太子は今や福岡を代表とする商品となりました。
歴史や語源は違うが「たらこ」「明太子」は同じもの!
鱈の種類で言い方の区別はされていませんが、「明太子」の名は、辛子明太子の誕生地域である福岡などで使用されたことから、方言のような扱いになると言われています。
日本語の標準が「たらこ」でも、福岡などでは「明太子」と言うのが普通です。
問題なのは、辛子明太子が身近な地域以外では「明太子は辛子明太子の略でしょう?」と誤解している人が多い点です。
「明太子」の言葉を用いる人がいた場合には、「カラシある方?ない方?」とどちらのことを言っているのかを確かめた方が良いかもしれません。