「させていただく」とは
意味
「させていただく」という言葉は謙譲表現に含まれます。
「させてもらう」「相手に許可を得たうえで、遠慮しながら物事を行う」という意味といえるでしょう。
ただ「させてもらう」のではなく、相手に対して恩恵を受け取っている場合にも「させていただく」を使うことが多いです。
また、「こちらとしては図々しい限りですが」という意味も含まれます。
「させていただく」を使えるのは「相手の指示や許可がある」という前提だと覚えておきましょう。
英語表現
「させていただく」を英語で表現するのなら、「let me ~ 」が適切でしょう。
そもそも、英語には日本語のように明らかな謙譲語が設定されているわけではありませんが、言葉を丁寧に伝えることで謙譲表現に繋がります。
そのため「I will ~」や「I am going to ~」という表現でも意味は伝わるのですが、「~します」という意味なので少しカジュアルな印象です。
より「させていただく」に近い意味で謙譲表現ともいえるのは「let me ~ 」だといえます。
「させていただく」を使う場面
では、「させていただく」を使う場面をみていきましょう。
「させていただく」を使う場面には、以下のものがあります。
- やむ負えない事情で欠席するとき
- 天候不良でスケジュールを変更するとき
- 体調不良で早退するとき
- 相手からの指示があり荷物や郵便を送るとき
続いて、「させていただく」を使う場面を、それぞれ詳しくみていきます。
使う場面①:やむ負えない事情で欠席するとき
仕事や学校、イベントなど何か予定があったものの、急な事情で欠席しなければならないことはありますよね。
たとえば急な災害や身内の不幸、事故に遭ったときなどは、誰が見てもやむを得ない事情といえるでしょう。
そんなときに断りを入れながら欠席を伝える際には、やむを得ない事情ということですでに許可を得ていると認識できるため「させていただく」を使うことができます。
使う場面②:天候不良でスケジュールを変更するとき
野外でのイベントや予定があったとしても、天候不良で仕方なくスケジュールを変更することもあるでしょう。
その際にも「させていただく」を使うことは可能です。
たとえば野外コンサートが雨で中止になるときや、職場での花見が雨で延期になるとき、運動会が雨で延期になるときなどの場合が挙げられます。
使う場面③:体調不良で早退するとき
仕事でも学校でも、体調が悪化したときには早退をする事が認められます。
発熱などの体調不良で先生や上司など、目上の人に早退の旨を報告する際にも「させていただく」は使えます。
勝手な事情で早退するのなら「させていただく」は不適切ですが、体調不良は仕方のないことなので「させていただく」が使えるのです。
使う場面④:相手からの指示があり荷物や郵便を送るとき
自分の意志で荷物や郵便を送るのではなく、相手からの要請があった上で発送の手配をした場合にも「させていただく」を使うことができます。
「させていただく」は相手からの指示や許可がある場合に使える言葉なので、「返信を送ってください」などの指示がある場合には「させていただきました」という報告が適切といえます。
敬語の基本!「させていただく」を使った例文
- 資料を確認させていただきます。
- 残念ですが、本日は休業とさせていただきます。
- 喜んで披露させていただきます。
- 本日は私が担当させていただきます。
続いて、「させていただく」を使った例文を、それぞれ詳しくご紹介します。
例文①:資料を確認させていただきます。
相手から資料の確認を依頼されている際の返答として「資料を確認させていただきます」という言葉の使い方は適切です。
自らの判断で資料を確認するという場合には「させていただきます」
は使うことができませんが、前もって上司や取引先から「確認してくれ」という要望があった場合には「させていただきます」という言葉が適切でしょう。
例文②:残念ですが、本日は休業とさせていただきます。
急な天候不良や災害、事件など何か理由があってやむを得ず休業せざるを得ない場合にも「休業とさせていただきます」という言葉が適切といえます。
本来であれば営業日であるにも関わらず突然休業をするのはよいことではありませんが、やむを得ない事情は起こり得ますよね。
お客様や利用者に対してお詫びをする際には「休業とさせていただきます」という謙譲表現が合っているのです。
例文③:喜んで披露させていただきます。
上司や先生などの目上の人からお披露目の依頼があった際にも「させていただく」という言葉を使います。
たとえば新年会で歌を歌うとき、自分の描いた絵を展覧会に展示するとき、結婚式の余興を任されたときなどには「喜んで~させていただきます」という返答が適切でしょう。
この場合は誰かからの依頼を受けて承諾するので「相手からの指示や許可がある場合」となり、「させていただく」が使えると判断できます。
例文④:本日は私が担当させていただきます。
お客様の担当者が席を外している場合などに、代役で担当を務める際にも「させていただきます」が適切です。
他にもレストランや美容室など、サービスを受ける側に対して提供者が挨拶をする際にも「本日は私が担当させていただきます」という言葉は有効でしょう。
お客側が直接依頼をしているわけではありませんが、サービスを提供するのは当然の行為であるため「相手からの指示や許可がある場合」に含まれます。
要注意!「させていただく」の誤用例
では、「させていただく」の誤用例として以下を紹介します。
- 資料を拝見させていただきます。
- この仕事を辞めさせていただきます。
- 週末を締め切りとさせていただきます。
- 会計を務めさせていただいております。
続いて、「させていただく」の誤用例を、それぞれ詳しくご紹介します。
誤用例①:資料を拝見させていただきます。
この文章は2重敬語になっており、すでに「拝見」という謙譲表現が行われているため、あえて「させていただく」という言葉は使う必要がありません。
先ほどの使用例で「資料を確認させていただきます」は問題ありませんが、「拝見」という言葉を使うのであれば「資料を拝見します」と言うのがスムーズでしょう。
誤用例②:この仕事を辞めさせていただきます。
仕事を辞める際には、上司や会社の許可が必要です。
自分勝手な判断で辞職はできないため、この場合「させていただく」という言葉は不適切といえるでしょう。
もし「させていただく」を使用するのであれば「辞めさせていただけますか」などが適切です。
誤用例③:週末を締め切りとさせていただきます。
締め切りを決めるのは、多くの場合こちら側の都合ですよね。
そのため、締め切りを相手に伝える際に「させいただく」を使うのは日本語として合っていません。
あくまでもこちら側の都合で決めた事項に関しては「させていただく」は使えないと覚えておきましょう。
誤用例④:会計を務めさせていただいております。
自分の役職や担当の係を自己紹介する際に「させていただく」を使うことも、間違った言葉の使い方になります。
「会計を務めております」だけでも謙譲表現になりますので、あえて「させていただく」を使用する必要はありません。
「させていただく」の言い換え表現
「させていただく」を別の言葉で表現するのなら「いたします」が最も適切といえるでしょう。
「させていただきます」が適切ではない場合には「いたします」と言い換えるだけで謙譲表現になりますし、相手にも気持ちよく伝えることができます。
たとえば「説明いたします」「データを添付いたします」など、相手からの指示などではなく自分の意志で行動する際には「いたします」を使用すれば問題ありません。
「させていただく」を正しく使ってスムーズなやり取りを!
「させていただく」という言葉はビジネスにおいてもよく使う言葉ですが、間違って使う人が多い言葉でもあります。
この機会に正しい「させていただく」の使い方をマスターし、自信を持ってコミュニケーションを取っていきましょう。
謙譲表現が二重になるのを気を付け、どいういうシーンで使うのが適切かを意識していけば、正しく「させていただく」を使うことができるはずです。