忖度とは?
意味
まず、近年流行し、急速に一般浸透した「忖度」という言葉の、本来の意味と、現在日常でよく使われる意味は微妙に異なっています。
安倍首相にまつわる一連の「森友学園問題」や「加計学園問題」のせいで、一般的に「忖度」といえば、「上の人の空気を読んで、便宜を図ったり、媚びへつらうこと」のようなニュアンスで使用されるようになってしまいました。
しかし、「忖度」の本来の意味は、「相手の気持ちを推察すること」とか「相手の意図することを察する」といった意味で、ヘラヘラと胡麻を擦るというようなニュアンスはありません。
読み方
「忖度」は「そんたく」と読みます。
あまり見かけない漢字である「忖」は、音読みで「そん」と読み、「度」は、一般的に使われる「温度」などの「ど」という読み方の他に、「たく」という読み方もあるのです。
日常的には、「支度」(したく)という言葉でよく使われる読みです。
忖度は、もともとは中国語から来ています。
語源
「忖度」という言葉の語源となったものは何でしょうか?
その語源は、古代中国にあり大変古い歴史を持ちます。
中国で初めて編纂されたとされる『詩経』に「忖度」という言葉が最初に登場します。
『他人有心 予忖度之』
(他人は違う心をもっていますが、私はそれを推し量ってわかることができます。)
というものです。
これからも、忖度は推し量るとか、推量するといった意味であることが見て取れます。
何千年もの太古から中国では使われていた言葉なんですね。
類語
「忖度」の類語として、まず挙げられる単語は「斟酌」(しんしゃく)でしょう。
「斟酌」は「相手の心情や立場などを汲み取ったり、手心を加えたりすること」といった意味です。
この他の忖度の類語としては、「推察」や「推量」、「気遣い」や「気を利かす」なども挙げられます。
要するに、気を回して相手の心情を読み取ったり推し量ったりする意味を持つ言葉は、大雑把な意味ではすべて忖度の類語に入るでしょう。
使い方
忖度は、2017年に流行語になって広まったおかげで、今でこそ社会のあちらこちらで使う人も増えてきましたが、もともとはそれほど日常的に使われる言葉ではありませんでした。
使い方としては、政治のような「本音」を隠して「建前」を前面に出す日本に多い表裏の使い分けを求められる場で、よく使われてきました。
別の言い方で言えば「空気を読む」というやつです。
日本人にはもともと気質的に親和性の高い言葉と言えるでしょう。
英語
「忖度する」という言葉は、日本人にとってもかなり難しい部類に入る言葉であり、英語でこれをあらわすとなると、一言ではなく、その意味するところを英語であらわすといった感じになります。
"guess about the feelings of someone"や、"care how someone feels(think)"といった言い回しが、「忖度する」をもっとも英語で言い表すのに近い意味の表現でしょう。
実際の文例をあげてみると、
I don’t think she’s the kind of woman that cares what others think.
(彼女は、相手の心情を忖度するような女じゃない)
といった具合になります。
「忖度」の例文
では、「忖度」の例文として以下の6つを紹介します。
- 学生などが忖度するケースで使う例文
- 会社組織などでよく使われる忖度の例文
- 人の性格などをあらわす時に使う忖度の例文
- 政治の場でよく使われる忖度の例文
- 仕事上の選択などでよく使われる忖度の例文
- 外交ニュースなどでよく使われる忖度の例文
続いて、「忖度」の例文を、それぞれ詳しくご紹介します。
「忖度」の例文①:学生などが忖度するケースで使う例文
(例文)
彼女は、英語が大好きで、また英語の成績も学年でトップと非常に優秀だった。
彼女が行きたい大学は、東京にある名門の私立大の英文科だったが、両親の希望や経済状態を忖度して、学費が安くて自宅から近い地元の国立大学を第一志望にした。
「忖度」の例文②:会社組織などでよく使われる忖度の例文
(例文)
社員A「Cのやつ、本来の◯×商事との共同プロジェクトじゃなくって、新規事業のプロジェクトリーダーになったんだな。
共同プロジェクト、順風満帆だったのに、こりゃまた、リスキーな橋を渡るもんだな」
社員B「今度立ち上げる新規事業のプロジェクトは、Cの上司の本部長の念願だったからね。
Cは、安泰を捨てて、本部長の意向を忖度したんだろう。
賭けだけど、上手くいけば一気に出世コースだよ」
「忖度」の例文③:人の性格などをあらわす時に使う忖度の例文
(例文)
実行委員A「今回の改善案、全会一致でうまく運ぶかと思っていたのですが、△さんだけどうしても反対の立場を覆せませんでした」
実行委員B「まあ、仕方がないでしょう。
△さんは、周囲や場の空気を忖度するような性格の人ではないですからね」
「忖度」の例文④:政治の場でよく使われる忖度の例文
(例文)
野党議員「あなたは、大臣の意向を忖度して動き、ゼネコンである××建設に話を持ち掛けたことは明白ではありませんか?」
官僚「私が、大臣や特定個人の意向を忖度して動いたというような事実は一切ございません。事実無根であります」
「忖度」の例文⑤:仕事上の選択などでよく使われる忖度の例文
(例文)
この公事に関する仕入れ業者としては、A社とB社の二者択一の洗濯になった。
私は、見積もりからB社の方が良いと思ったが、最終的に社長の気持ちを忖度して、取引実績の古いA社に決めた。
「忖度」の例文⑥:外交ニュースなどでよく使われる忖度の例文
(例文)
アメリカで会談した〇〇首相は、アメリカに忖度して、型落ち在庫の武器や弾薬などを大量に購入する約束を取り付けられてしまった。
まったく情けない限りである。
「忖度」が2017年流行語として選ばれた経緯
「忖度」という言葉は、前述のように中国では古い歴史を持つ由緒正しい言葉ですが、その難しい響きもあって、日常的に使用されることはありませんでした。
しかし、2017年の「ユーキャン新語・流行語大賞」において、流行語に選ばれるほど流行し、今ではすっかり一般社会に浸透した言葉になっています。
この言葉が一気に使われ始めた経緯は、ご存知の通り、未だにうやむやにされ、自殺者、変死者を数名以上出している異常な大疑獄事件である、「森友学園問題」および「加計学園問題」を巡る安倍首相の意向を汲む言動、いわゆる安倍首相への忖度が焦点となった一連の報道によるものです。
これによって、安倍政権、ひいては日本社会に根強く蔓延っている不文律「お上への忖度」が、白日の下に晒されたわけです。
「忖度とは」に関するまとめ
忖度とは、相手の気持ちや事情を推し量ること、といった意味ですが、現代の日本においては、モリカケ事件の影響も大きいせいもあり、少し違ったニュアンスで使われることも多い言葉です。
ここまで、忖度の日常的な例文を交えてその使い方や、類語なども紹介してきました。
今やすっかりポピュラーな言葉になった感のある忖度ですが、できれば正しい使い方をしていきたいものですね。