自己破産とは債務整理のうちのひとつです。
この自己破産とは、まず裁判所に行き「破産申立書」を提出します。
その後「免責許可」をもらい、全ての債務(=借金の事)を免除(つまりゼロになるという事)するという制度です。
免責許可がおりると税金などを除く全ての債務が放棄されます。
しかしある一定以上価値のある財産も手放す事となり、該当財産は全てキャッシュに換えて債権者(お金を貸した者)に配当され、20万円以下の預金など裁判所で定めた基準を超えない財産のみ手元に残すことができます。
その自己破産の「破産申立書」を提出するにあたって、添付資料として「預金通帳」も必要な事はあまり知られていない状況です。
今回は自己破産の申し立てにあたり必要な預金通帳についてご紹介していきます。
なぜ?自己破産の申し立てに通帳が必要な理由
預金通帳が必要な理由は主に二つあります。
①破産管財人が自己破産する人の全財産を把握するため
②自己破産する人のお金の流れを把握するため
なぜ必要なのかを詳しくみてみましょう。
①破産管財人が自己破産する人の全財産を把握するため
先ずは「破産管財人」について解説します。
裁判所に行くと破産管財人名簿という書類があります。その名簿に記載されているのが破産管財人です。名簿に記載されている人の多くは弁護士の先生です。
破産管財人の仕事内容は下記の通りです。
◇自己破産の手続きに不正な箇所はないかを裁判所の指示に従ってチェックをする事
◇自己破産申立人に財産がある際はそれを回収、売却等をし、その財産を債権者に分配する事
破産管財人は自己破産申立人から提供された預金通帳を調査確認し、不正な点はないかをチェックし、申立人の全財産を隈なく把握する為に預金通帳が必要なのです。
②自己破産する人のお金の流れを把握するため
破産管財人は預金通帳をチェックし、申立て時点の財産を確認するだけでなく、破産する迄のお金の流れも把握します。
預金通帳に記帳されている取引は、過去から破産申し立てするまでのお金の流れを如実に反映しています。それを調査する事により、「不正な点はないか」「隠し財産がないか」等も含めてチェックするのです。
自己破産の申し立てに必要な通帳の用意方法について
①自己破産申し立て時の通帳は全ページをコピーする
全ページが必要とは具体的にどの部分までを指しているのでしょうか。
①預金通帳の表表紙と裏表紙(※口座名義人の名前が印字されていて、銀行のイラストやロゴ等が記載されてるいる部分)
②預金の種類、支店名、口座番号が印字されている見開きのページ
③実際の入出金取引が記帳されている全ページ
④定期預金の全ページ
⑤貯蓄預金の全ページ
⑥その他金融機関に預け入れている全ての資産の全ページ
以上のページの全てのコピーが必要となるのです。
定期預金などは口座を持っているだけで取引はしていないというケースでもコピーが必要となります。もし定期預金等は所有していない場合でも「定期預金は所有していない」という金融機関の証明が必要になります。
ここで大事なのは「すべての通帳のコピーが必要である」という点です。
◇普段利用していない
◇口座自体は存在するが何年も利用していない
以上の理由で預金通帳のコピーを取らず提出しなかったというのは許されないのです。
例え預け入れている資産が0円でも、残高ゼロ円ということを証明する為にも預金通帳のコピーが必要なのです。
昨今利用者が急増しているネット銀行の取引明細ももちろん必要です。『ネット銀行は実際の通帳は発行されないからバレないかな』は許されません。しっかりプリントアウトして提出しましょう。
②自己破産申し立て時の通帳では1年分の情報が必要
通帳の取引明細は、申立日から遡り、過去1年分の情報が必要です。1年間の取引数が多く通帳が複数冊になる場合は、複数冊全て必要となります。
例えば「もう何年も使用していなくて、過去1年分の取引数がゼロ件」というケースの場合でも、取引していませんよという証明の為にコピーが必要です。このような使用していないケースの場合は「最終取引が記帳されているページのコピー」にプラスして「残高証明書」を金融機関に発行してもらいましょう。
③自己破産申し立て時の通帳コピーはA4用紙にコピーする
通帳のコピーは全てA4用紙でコピーします。裁判所に提出する書類は破産申立書を含め全てA4サイズで提出するため、預金通帳のコピーもA4サイズにあわせるためです。
④自己破産申し立ての2週間以内までに通帳記入を済ませる
通帳は申立日の2週間以内までには記帳を済ませておくのが基本です。預金通帳は複数の金融機関で複数の口座を所有しているケースほとんどです。
記帳するには、まず預金通帳を持参しその銀行のATMに行かなければなりません。銀行の営業時間を加味すると予想以上に大変です。
面倒だからと例えば申立日の1ヶ月前や3週間前に事前に記帳し、そのあとは申立日まで記帳しないという事は認められておらず(※取引がなければ大丈夫です)、必ず申立日から2週間の間に全ての記帳が必要です。
自己破産申し立て時に通帳内容を証明する書類が必要なケース
①個人名の入出金取引がある
通帳に個人の名義で入出金取引が記帳されていると、裁判所にどの様な理由で取引を行なったか説明しなくてはなりません。
通帳に個人名があると、裁判所は下記の疑念を持つためです。
◇借金の返済が債権者一覧表以外に記載したもの以外にもあるのではないか
◇資産を隠すための取引ではないか
その嫌疑を晴らすためにも通帳に個人名義の入出金取引がある際は
◇「上申書」という書類を作成して、取引内容を説明する
◇取引内容の証明となる書類
のどちらかが必要です。
取引内容の証明となる書類の代表例は下記の通りです。
◇領収証や請求書、納品書などの書類
◇メール等でやり取りの詳細が残っていれば、その該当するメール文面をプリントアウトする
②一括記帳がある場合
銀行のキャッシュカードは持ち歩いていても、通帳自体は家に置きっ放しで全く記帳をしていなかったというケースに身に覚えはありませんか。
このように長期間記帳を行なっていないと「一括記帳」といって取引が全て合計で記帳されてしまいます。
一括記帳になってしまうと1取引につき1行で記帳されないため、取引内容を把握出来なくなってしまうのです。
一括記帳になってしまったら金融機関に出向き、一括記帳の期間分全ての取引明細を発行してもらう必要があります。
金融機関によっても異なりますが、この一括記帳になってしまった分の取引明細発行は即日出来るようなものではなく、何日かかかるケースがほとんどですので迅速に行動するのがベストでしょう。
また、この一括記帳になってしまった分の取引明細は発行にあたり手数料がかかることがあります。手数料は1取引につき数百円の場合がほとんどですが、取引数が多いのに1年間分全く記帳していなかった場合は高額になってきますので注意しましょう。
通帳が手元にない!?自己破産申し立て前に銀行窓口で申請を
通帳を失くしてしまったり、使っていなかったからという理由で捨ててしまったりというケースも存在します。このような場合でも取引明細は必要です。
一括記帳の時と同じく金融機関に出向き、「取引明細を発行」若しくは「通帳を再発行」するようにしましょう。
自己破産の申し立てに必要な通帳の用意方法や申請方法についてわかりやすく解説!まとめ
自己破産の申し立てに必要な預金通帳の全ての必要箇所を揃えるのは時間も労力もかかります。都心の場合だと、メガバンクならば街中にたくさん支店がありますので記帳する場所に困ることはないでしょう。
しかし地方銀行や信用金庫等はある一定の地域にしか存在しない事も多く、記帳するには遠出をしなくてはならないこともあるでしょう。
また金融機関は営業時間も決まっているため、営業時間外は記帳出来ません。迅速な行動を取らないと申立日に間に合わなかったり、申立日が後にずれ込んだりしてしまうのです。
しっかり予定をたて行動し、必要書類を全て揃えて申立申請を行いましょう。
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