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2017/02/10

与信限度とは。算出方法や設定の決め方、注意点などをまとめました

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目次

リスク管理に「与信管理」を!

自社がいくら健全な経営を続けていたとしても、相手先企業の倒産から未回収債権が生じ、その結果として大きな損失を抱えると言ったケースも少なくありません、あるいは連鎖倒産ということもありえます。
では、企業がそのような中を生き抜いていくためには、何が必要でしょうか。
少なくともその1つとして、日常的で絶え間ない与信管理を行うことが挙げられることは間違いないでしょう。

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与信管理とは

与信については売掛金を例として説明するのがわかりやすいでしょう。
いうまでもなく、売掛金はそもそも回収できるかどうかはわからない債権です。
それにもかかわらず、製品等と引き換えに金銭を受け取っていないのは、相手方がきっと支払ってくれるだろうと信用しているからです。
このように取引の上で相手方を信用することを、「信用を与える」すなわち「与信」と言います。

つまり、「与信管理」とは、売掛金等の未回収債権の金額を、取引相手の支払い能力に応じてコントロールすることだといえます。
そして、そのコントロールを行う上で、どの程度の金額まで取引相手を信用して取引を行うかという「与信限度額」を設定することが与信管理には欠かせない要素となります。

与信限度額の設定方法

①相手先の純資産を基準とした算出方法

与信限度額の設定方法として、相手先の純資産を基準とした算出方法があります。
この方法は、「取引相手の純資産」を基準として、この程度であれば仮に焦げ付いたとしても構わないとされる「一定割合」を設定します(一般的には10%程度を設定する企業が多いとされています)。
そして、相手方の信頼度に応じて「格付けによる倍率」を1.0(倍)を中心値として設定します(格付けは、取引先の信用力に応じて設定します。例えば、A〜E の5段階で評価する場合には、A1.8 B 1.5 C 1.0 D0.7 E 0.4といったように各取引先の支払い能力に応じて設けます。)。
そして、これらの値をそれぞれかけ合わせたものを「与信限度額」として算出します。

相手先の純資産を基準とした算出方法の例

例えば、純資産額が2000万円、一定割合が10%、格付けがCの場合では、
2000万円×10%×1.0=200万円
となりますから、この取引相手には、200万円を限度として与信取引をすることができるということになります。

①の算出方法のメリットは、相手方企業の倒産時に対応できる点です。
純資産は倒産時の配当金の基礎となりますので、この算定方法に従った場合には、相手方が倒産した場合でもある程度の配当金を受けることができる可能性が高いといえます。
しかし、取引相手の純資産額が少なかったり、債務超過状態にある場合には、そもそも倒産時の配当金を期待することができませんので、この方法を用いることは適しません。

②自社売り上げ債権を基準とした算出方法

次に紹介するのは、自社の売上債権を基準とした算出方法です。
自社の売上債権を計上し、その額を基準として、焦げ付いても影響が小さいといえる額を「一定割合」として設定します。格付けについては①と同様ですが、必ずしも倍率の設定を①と同じにする必要はありません。
 なお、売上債権とは、貸借対照表にある、全ての「受取手形」や「売掛金」を合計したものとなります。

自社売り上げ債権を基準とした算出方法の例

例えば、自社の売上債権が1000万円、一定割合が10%、格付けがCの場合には、
1000万円×10%×1.0=100万円
となりますので、格付けがCの企業には100万円までの限度で与信取引をすることができることになります。

②の算出方法は、取引先の数の多い企業にとっては、あくまで自社のリスク限度を基準として、取引先の信用度に応じて限度額を配分できるという点でメリットがありますが、自社の売上の変動が大きい場合には、予測が立てづらく、かえって与信管理を困難にしてしまいがちです。
また、それぞれの取引先に対して依存度が高い場合には、自社の事情を中心とするこの算定方法はあまり向かないといえます。

③相手方の仕入れ債務を基準とした算出方法

他の方法としては、相手方の仕入れ債務を基準とした算出方法というものがあります。
相手先の仕入債務総額を基準として、焦げ付いても影響が小さいと言える範囲の「一定割合」を設け、「格付けによる倍率」を設定します。
なお、仕入債務は、相手方企業の決算データの中の貸借対照表の、全ての「買掛金」や「支払手形」、「裏書手形」、「未払金」を合計したものとなります。

相手方の仕入れ債務を基準とした算出方法の例

例えば、相手先企業の仕入債務額が500万円、一定割合が10%、格付けがCの場合は、
500万円×10%×1.0=50万円
となります。このとき、この相手方企業に対しては50万円を上限として、与信取引ができることになります。

③の算出方法を用いた場合には、その相手方企業にとっての筆頭債権者となる可能性が低くなりますので、債権が回収不能となった場合のリスクを抑えることができます。
しかし、この算定方法は相手方の決算データがあればこそ成り立つものでもありますので、決算データがない場合には、相手先の仕入債務については推定値となり、格付けにおいても根拠が薄くなりがちなため、不確定要素が大きくなってしまうというのがこの算出方法の欠点でもあります。
また、相手方企業の規模の大きさなどから、仕入債務があまりにも多額となる場合には、自社規模に対して与信限度額が大きくなりすぎてしまい、与信管理のうえで現実的に機能しにくくなってしまうといった点も欠点に挙げられます。

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複数の算定方法を用いた「与信限度額」の設定方法

原則的には、自社の方針や環境に基づいて、いずれかの算定方法を選択する事になりますが、取引先各社について①〜③の全ての算定方法を用いた上で、一番低い額を「与信限度額」として設定するという選択方法もあります。
たとえば、これまでに挙げた与信限度額例を元にするならば、

①=200万円
②=100万円
③=50万円
となりますので、この場合には、③の50万円を限度として与信取引を行うことが最も安全な与信管理であるといえます。

また、格付け基準では汲み取りきれない事情などから「この取引先は、このくらいの与信限度額であるべきだ。」という設定額がある場合には、④としてその額を検討対象に入れた上で、比較することになります。例えば、④が40万円であれば、④の40万円を与信限度額として、④が60万円であれば、③の50万円を与信限度額として設定することになります。

代表的な3つの与信限度額の算出方法の注意点

ここでは、代表的な3つの与信限度額の算出方法について紹介しましたが、それぞれの利点と欠点があります。自社の状況に応じた計算方法の採用を行うことが大切です。

今回①〜③に挙げた計算式自体は単純です。しかし、これらの計算式の選択や組み合わせと、それぞれの基礎となる「一定割合」や「格付け倍率」の設定に、与信管理の奥深さがあるといえます。
全ての算定方法を通じて用いる「一定割合」についても慎重な検討が必要となりますし、「格付け倍率」の設定の上での、支払い能力による格付けについても客観的で統一的な基準を設けることが重要です。

ちなみに、一定割合の設定は、「どこまでなら焦げ付いてもよいのか」という基準値ですので、自社においてどの程度まで与信限度を設ける事ができるかという算定に基づくことになります。そして、その枠内でどのように取引先に対する配分を行うかをという考えが、格付け倍率の設定に反映されますので、いずれの値にも、自社全体の与信限度の算定が必要になります。

したがって、自社全体の与信限度を設定した上で、「一定割合」と「格付け倍率」の設定を行うとよいでしょう。

とはいえ、これから与信管理を始めようという方は、まずは難しく考えずに、何通りかの計算をした上で、それぞれ比較検討してみることをお勧めします。もっとも、計算の際には、設定値には必ず客観的根拠を求めるようにしてください。でないと、結局は独断にもとづいた計算となってしまい、与信限度額はその意味をなさなくなります。

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与信限度とは。算出方法や設定の決め方、注意点などのまとめ

以上が、与信限度額の設定方法となります。
全ての取引先について、定期的に与信限度の見直しを行うことになります。もちろん、状況が変化した場合には柔軟に対変更を加えることも必要です。
そして、設定した与信限度額に応じて、実際に取引を制御していくことまでをも含めて与信管理です。
与信限度額を設定したからといって安心せず、日常的に、与信取引の状況に気を配り続けるようにしましょう。
 

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