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2018/05/01

派遣・契約社員の2018年問題!2018年問題に関わる2つの法改正

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2018年問題とは?

派遣社員における「2018年問題」を耳にすることがありますが、その内容を詳しく理解している人は多くありません。ただし、正社員として働いているからといって全く無関係と言うわけでもありません。

これによって社員や会社にどのような影響がでるのか、雇い止めにどう繋がっていくのかについて詳しく解説します。

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有期雇用契約者が気になる2018年問題とは?

有期雇用契約者という言葉は簡単に言い換えると派遣社員を表す言葉です。その点から考えて、無期雇用契者が正社員ということもできます。

このような雇用形態の場合、雇用される側は企業に属してはいるのですが、そこにある社内規定等が適応されるわけではなく、十分に守られているわけではありません。

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そのため、このような働き方をする人の権利を守るために「労働者派遣法」という法律が制定されています。この法律は2015年に改正されており、その適応が2018年からスタートすることになっています。

その中でも最も重要なのが、派遣社員が一定の更新を繰り返した場合、その人が希望すればその企業から無期雇用の契約を受けられるというものです。

働く側から見れば非常に良いことなのですが、雇い入れる側にとってこのような形で正社員やそれに準じた社員を増やすことは、人件費増加等の面で負担が増えることになります。

雇用側はそういった事態を避けるために、権利発生の前に再契約をしないといったことも考えられます。これは、一種の雇い止めとなることもありえます。

もしこのような事態になった場合、契約をしてもらっている立場の社員にとっては大きな問題であり、その後の人生を左右しかねない事態につながることも考えられます。

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2018年問題に関係する2つの法改正の概要

これに関しては、2つの法律が大きく関与しています。それは「改正労働契約法」と「改正派遣法」です。

①2012年の改正労働契約法

この法律は2012年に改正され、2013年4月1日から(一部は2012年8月から)施行されています。この改正においては目玉とも言えるものがありました。それが「5年ルール」と呼ばれるものです。

これは、一つの企業が同じ派遣労働者と契約し、その後更新等を繰り返し、5年を超えた場合にこの人からの無期労働契約の申し出があった場合、この申込に承諾したものとみなすというものです。つまり、企業側はこれを断ることが出来ません。

②2015年の改正派遣法

派遣社員の労働条件や賃金・福利厚生等を定めた法律が「労働者派遣法」です。2015年の改正においては雇用期間制限の見直しがなされました。

以前は無制限であったものが、改正後同じ企業で働けるのが3年までとなりました(あくまで原則であって絶対に3年を超えていけないわけではありません)。

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2012年の労働契約法改正のポイント

この法律において特に大きな改正が2012年に行われたものです。その内容等について解説していきます。

そもそも労働契約法とは?

この法律は比較的新しい法律で、平成20年3月スタートとなっています。この法律は労働契約についての基本的なルールを分かりやすく明文化したものといえます。

この法律ができた背景としては、派遣労働等就業の多様化にともない、それまではなかった問題が出てきたり、雇用主と従業員等の間での労働紛争が増えてきたことによります。

つまり、雇われる側の権利保護を図りながら、適切な契約の元、雇用主と労働者との関係が安定的に保たれることを目的とした法律であるといえ、どちらかと言えば労働者よりの法律となります。

労働契約法改正では何がどう変わった?

この改正の中でもっとも大きな改正が、「無期雇用ルール」です。有期労働者の場合、一般的には期限を定めた契約で雇用されています。

この改正において、このような契約であっても、契約更新が繰り返され、その更新が5年以上を超え、当該雇用者が希望した場合、企業側は無期雇用への転換をしなくてはならないというものです。

改正の背景

この改正の背景としては、派遣労働等の就業形態が多様化したことにともない、雇用する側と雇用される側の間で結ばれる契約においても多様化が進み、個別案件での争議等が増えてきたことによります。

一般的には、雇用する側と雇用される側の関係で見た場合、雇用する側の力が強い場合がほとんどです。そのため、雇用される側が不利にならないようにする目的と、多様化する就業形態に則した改正が必要になったのです。

また、ある一つの職場で契約を更新し続けた場合、労働者側も正社員と慣れるのではないかと言う期待を持つことになります。この期待保護の観点も改正の背景にあると考えられます。

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2015年の労働者派遣法改正のポイント

もう一つの重要な法律が労働者派遣法です。この法律では2015年の改正が大きな影響を及ぼしています。

派遣労働者とは?

これは、無期限で雇用される正社員と違い企業が必要とする場合のみ雇用される労働者のことで、契約の仲介を行う人材派遣企業から派遣されるため、派遣労働者と呼ばれます。

一般的に派遣労働者は、雇用主である企業がいつも以上に労働力を必要とする場合のみ雇用されることになるため、その期限を定めた契約となる場合がほとんどです。当然、企業側の社内規定の適応もありません。

派遣労働者と正規雇用社員の違いは?

派遣労働者は、企業等が一定の期間必要な労働力を確保するために、人材派遣会社などを通じて雇用契約を結ぶ人となります。

それに対し、正規雇用社員は企業側が直接雇う形でその個人と直接契約をした社員ということになり、無期限の契約となります。

これは単に、無期限であるか有期であるかの違いだけでなく、社内規定による権利や福利厚生の適応になるかならないか、給料面における差などの違いも出てきます。

労働者派遣法とは?

派遣労働者を雇い入れるというのはあくまで一定期間のみの労働力確保が目的となり、正社員と違って社内規定の不適応など、働く側は十分に権利を与えられているとは言いがたいのが現状です。

そのため、その権利を守るために制定されている法律が「労働者派遣法」です。この法律は派遣元企業や派遣先企業が契約するに当たっての指標となるいわゆるルールブックと言えます。

このルールブックが存在することにより、雇い入れる企業側は、派遣労働者に対してそのルールに則った扱いをしなければならず、労働者側もそれに企業側が違反した場合の権利行使などが行えるわけです。

労働者派遣法改正では何がどう変わった?

2015年の改正においてもっとも大きな改正点となるのが、「労働者派遣の期間制限の見直し」といわれるものです。

それまで一般的な人材派遣業務では、最長3年という制限が設けられ、研究開発やエンジニアなどの専門26業務は例外とされていましたが、その区別がなくなり、すべての業務で最長3年となりました。

そのほかにも、派遣労働者と正規雇用者との待遇均衡(賃金水準・教育訓練・福利厚生等)の推進やキャリアアップ措置、労働者派遣企業の許可制への一本化なども盛り込まれました。

派遣労働者側の権利が向上したようにも見えますが、一方で期間制限の一律化による継続雇用の機会が失われると言った問題もはらんでいます。

改正の背景

改正の背景には、派遣労働者と正規雇用労働者の労働条件の格差がありました。派遣労働者の場合、正規雇用の労働者に対し、賃金が低かったり、雇用主企業の教育制度や福利厚生制度が使えないなどの差があったのです。

また、専門26業務といわれる業務に従事する派遣社員に関しては、雇用期間の制限がなかったため、正規雇用にくらべ低い賃金や不利な労働条件で雇い続けるといったこともできたわけです。

また、雇用主に対して労働者を仲介する派遣会社についても、派遣労働者に対するキャリアアップ教育等の義務がなく、派遣労働者にとっては不利な労働条件が多かったということも背景の一つであるといえます。

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有期契約労働者から無期契約労働者への転換条件

2018年問題の最も重要なポイントは、労働者の有期契約から向き契約への転換と言う点です。この転換条件について解説していきます。

「同一の使用者」との間に有期契約の通算期間が5年を超える場合

契約社員の場合、使用する(契約する)事業主が同じで、契約の更新が1回以上あり、通算の労働契約期間が5年以上あれば、無期契約への転換申し込み権が発生することになります。

つまり、この法改正によって、2013年4月1日以降の有期労働契約においては、その後更新があった場合2018年4月1日以降、その条件に適合する労働者側は無期労働への転換を申し入れることができると言うことになります。

労働者が使用者に対して無期契約への転換を申し込んだ場合

有期労働者で、改正労働契約法における5年ルールに合致した人が、使用者に対して無期限契約派の転換を申し出た際、使用者は断ることができません。

もし、何らかの事情で労働者側が申込をしなかったばあいでも、次の更新期間で申し込むこともできるように定められています。

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2018年問題に対する労働者の反応は?

これまでなかなか正社員となれず、厳しい条件の下で働いてきた派遣社員にとっては(自分の意思で正社員を選んでない場合は別)、一連の法改正とそれにともなう制度改正は朗報と言えます。

特に、ある程度同じ会社で実績を積み、経営者や所属部署・同僚からの評価も高く、会社にとってなくてはならない人材と評価されている場合はなおさらです。

しかし、すべてが良い方向にあるとは考えていない場合もあります。それは、5年を迎える前に契約を切られてしまうことなども考えられるからです。

あくまで、5年にわたって契約を更新してもらえるかどうかは雇う側に権利があり、場合によっては、契約先がうまく見つからないのではないかと言った不安も出てきます。

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2018年問題で雇い止めを言い渡された場合の対処法

2018年問題が問題と呼ばれる一つの側面として「雇い止め」があります。ここからは、雇い止めについての情報や、雇い止めを言い渡された場合の対処についてご紹介します。

そもそも雇い止めとは?

そもそもは、有期契約労働者との契約更新をせずに、契約期間終了にともなって契約を更新しないという行為ということになります。

雇い止めに関しては、その労働契約の締結や期間終了時の紛争を未然に防ぐと言う意味から「有期労働契約の締結、更新および雇止めに関する基準」も定められており、使用者側の遵守が促されています。

雇い止めは違法じゃないの?

雇い止めという言葉からすると、雇い入れる側の強い権限の発動のように聞こえますが、あくまで契約を更新しないと言う契約上の権利行使であり違法とはいえません。

しかし、明らかに無期限転換を避けるために行った場合や、全く合理的な理由がない場合など、その理由が不当であると認められた場合には無効になることもありえます。

つまり、違法ではないと歯考えられる雇止めも雇用者側が自由に行うことができるわけではありません。そこには労働契約法上明文化されたルール等も存在します。

雇い止め予告とは?

雇い止めに関してはその理由が正当な場合、特に違法となるものではありません。しかし、厚生労働省の定めによれば、その予告に関しては原則として30日前に通知を行うこととされています。

しかし、そこにも一定の条件があり、契約を3回以上更新しているか、雇用の日から1年超継続勤務している労働者に対してとされており、それ以下の場合はこの限りではありません。

また、予告に関しては労働者側から雇い止めの理由等について証明書を請求したときにはその証明書を発行しなければならないことも明文化されています。

雇い止めの法理とは?

雇い止めに関して言えば、これまでも多くの事例が法廷で争われてきました。その内容を踏まえ、労働者保護の観点から、一定の条件に合致する場合雇い止めを無効とするという判例上のルールが確立しています。

このルールのことを「雇い止めの法理」と呼んでいます。この法理は労働契約法によって条文化されています。

雇い止めを無効化・撤回することはできるの?

雇止めに関しては一定のルールがあり、これに合致しないケースであれば不当なものとして無効化、あるいは撤回することもできます。

例えば、「予告のない雇止め」がそれにあたります。一定の雇用条件を満たしているにもかかわらず、雇止めを事前に予告していない場合は無効と判断され、撤回できる場合があります。

そのほかにも、何度も契約を更新され正社員と同じような立場となっている場合も雇止めが向こうと認められる場合があります。これは、契約社員の継続雇用に対する期待を保護すると言う意味合いがあります。

そのほかにも合理的な理由のない(あるいは不合理な)雇止めに関しても無効となる可能性は考えられます。

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派遣労働問題以外でも!さまざまな2018年問題まとめ

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2018年にはその他にもさまざまな問題があると言われています。ここからは、そのほかの2018年問題について解説していきます。

不動産の2018年問題とは?

不動産の2018年問題の根底にあるのは「不動産需要と供給のバランス」です。現在、都心部を中心に、オフィスビルの開発が加速していますが、その需要と供給が逆転すると言われているのが2018年なのです。つまり、ビル余りの現象が生じると言うものです。

また、少子化と人口減により18歳人口がマイナスに転じていく問題から、住宅の売れ行きが減少していくという予測が出ており、これも一つの不動産における2018年問題といえます。

大学の2018年問題とは?

大学に入学する年齢である18歳人口が減少に転じるため、大学は受験者やその定員数に達するだけの学生を確保することができなくなると言う問題が出てきます。

その場合、大学経営に対して大きな意味を持つ受験料や授業料と言った収入が減少していくことが予想されます。その点から、学生を集めることのできない大学の淘汰が始まると考えられるのが大学の2018年問題です。

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少子化にまつわる2018年問題とは?

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2018年から18歳人口が減少に転じると言うことは、それ以前の少子化が大きく影響しています。今後もこの傾向は続くと考えられ、その場合、当然のことながら労働人口に大きな影響を与えることになります。

労働人口が少なくなると言うことは、産業における労働力確保が困難になると言う側面もあり、国内企業の衰退にも直結しかねません。

また、高齢者を支える年代が少なくなると言うことは、国の公的保険料収入や税金収入の減少も考えられ、大きな問題となってきています。

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派遣・契約社員の2018年問題!2018年問題に関わる2つの法改正のまとめ

 
2018年は派遣・契約社員にとって大きな転換期ともいえます。これは、労働契約法と派遣法の改正が大きく影響しています。

もちろんこのことは、有期労働者として働く人に限った問題ではありません。正社員や、社員を雇用する側にも大きな影響を及ぼす問題です。

労働環境における2018年問題を理解し、今後の就労を含めた生活設計に活かしていきましょう。

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