風評被害という言葉の意味や使い方は分かりますか?
実は誤用が多く見受けられるんです。
風評被害の例として、これまでどのようなものがあったか一覧を紹介して、風評被害が起こる原因と、風評被害にあった際の対処法について考えたいと思います。
風評被害とは?
風評被害という言葉があまりにもメジャーになりすぎて、かなり頻繁に使われるようになりました。
あらためて風評被害の正しい意味と使い方を押さえましょう。
風評被害とは、辞書を調べると風評によって経済的被害を受けることと掲載されています。(経済的だけでなく、後述のスマイリーキクチさんの例のように精神的被害を受けるケースもあります。)
風評とは、世間であれこれ取りざたすること、及びその内容を意味します。
噂も風評の類語ですが、風評被害は噂の中でも特に「根拠のない噂のために受ける被害」について言います。
風評被害は誤用が多い?正しい使い方とは
ここまで風評被害という言葉がメジャーになりすぎて、頻繁に使われるようになったものの、その使い方について新聞社までもが読者から誤用ではないかと指摘されることも多いようです。
先程風評被害の意味について「根拠のない噂のために受ける被害」と説明しました。
つまり、正しい情報を得て、それによって消費者が正しく判断したものまで風評被害と報道したりするのは間違っています。
例えば、箱根の大涌谷で火山活動が活発化したその真っ只中に、観光客が激減したり、名物の黒たまごが販売中止になったりしたことを、地元紙は風評被害と報じました。
これは明らかな誤用です。
また、海外などでテロ行為や無差別大量殺人などがあった国や地域に関しては、しばらくは観光客が減ってしまう、そのためキャンセルが相次いで旅行代理店や航空会社、地元のホテルは風評被害を受けているという報道の仕方もありました。これも誤用です。
マスコミは正しい言葉を使用して、正しい情報を発信しなければなりません。
実際にあった風評被害の例一覧
①東日本大震災後の福島県
風評被害という言葉が、ここまで日本に浸透したきっかけとなったのは、間違いなく東日本大震災後の東京電力第一原子力発電所事故だと言えます。
情報によると、原発から半径30kmよりも外の地域は放射線量が少ないにもかかわらず、まるで福島県全体が放射線によって汚染されているかのような間違ったイメージが植えつけられ、福島県産の商品がまるで売れないという状況が続きました。
福島県からの引っ越しや転校を余儀なくされた人達は、引っ越した先でいじめに遭ったりしているともいいます。神奈川県に転向した小学生は「放射能がうつる」といじめられたと、大変悲しいニュースもありました。
②カイワレ大根
これは1996年、大阪府堺市でO157食中毒の騒動が起きた時のことですが、大阪府内の業者が出荷したカイワレ大根が食中毒の原因となった可能性は否定できないと、当時の厚生大臣である菅直人が発表してしまいました。
これにより、倒産や破産してしまう農家や業者が相次ぎ、ついには自殺者まで出す最悪の悲劇となりました。
検査の結果は、その疑いを持たれた施設からも従業員からもO157は検出されませんでした。
正しい情報ではなく、間違った情報や確定ではないあやふやな情報を、影響力のある人物が軽々しくも発言してしまうと、このようなことになってしまうということです。
これこそ風評被害です。
③BSE
BSEというと、それ以前は狂牛病と呼ばれていましたが、牛の脳の中に空洞ができてスポンジ状になり、異常行動や運動失調などを示すようになり、最悪の場合は死亡するとまでいわれている病気のことです。
2001年には日本においても発生が確認され、2003年にはアメリカで発生したことを受けて2年ほどアメリカ産牛肉の輸入を禁止したことがあります。
これにより、該当する牛肉を使用していない外食産業さえも大変なダメージを受けました。マクドナルドも鶏肉や魚を使ったハンバーガーで急場をしのぐ対策を取ったりしましたが、政府やマスコミの発信力のなさを露呈しました。
この時の教訓を得て、東日本大震災の時には風評被害を食い止めようと、政治家たちのパフォーマンスも見られましたが、十分な対応とは言えないものでした。
④豊川信用金庫事件
これは1973年に起きた事件ですが、何度も情報番組で扱われているので有名な話です。
事の発端は、1973年12月8日、豊川信用金庫に就職が決まった女子高生のことを電車内で友達が「信用金庫は危ないよ」と冗談半分でからかったことがきっかけです。
言った当人は銀行強盗が入ったら怖いという程度の意味だったのですが、言われた本人は本気にしてしまい帰宅後に親せき等に豊川信用金庫は(経営の面で)危ないのかと尋ねて確認しようとします。
翌日9日には、その親戚が美容室を経営する知り合いに豊川信用金庫は危ないらしいと話します。
10日には、その経営者が、親戚に話を伝えるところをクリーニング店店主が聞いていて、帰宅後に妻にも話します。
11日には既に町の主婦の間で噂になっており、「らしい」ではなく「豊川信用金庫は危ない」と断定で口コミにより広がっていきます。
13日、当時は電話の貸し借りが当然のようにありましたから、先述のクリーニング店で電話を借りたある人が豊川信用金庫から120万円を降ろすように指示しているところを聞いた店主が、危ないから降ろそうとしているのだと勘違いし、自身もあわてて180万円を降ろします。
そこからはこの店主と妻が噂を広げて、あっという間に話は「危ないらしい」から「危ない」へ、そして「つぶれる」と、伝言ゲームはどんどん誇張された間違った形で伝播していきます。
窓口には預金者が殺到し、数千万円が降ろされるという事件にまで発展しました。
人の誤った噂の広げ方によって、こんなことまで起きてしまうのです。
⑤スマイリーキクチさん
これは、ネット風評被害にあった有名人の代表的な例です。
芸人のスマイリーキクチさんが、ある殺人事件の犯人または関係者であるという、根も葉もない全くの嘘がネット上で広がり、本人は大変な誹謗中傷を受けていたというものです。
脅迫さえも受けていたということで、大変気の毒な事件ですが、ネット社会が生み出した功罪と言えます。
風評被害が起こる原因
原因①大元の原因は不可抗力によるものもある
風評被害が起こる原因について考える時に、まずそもそもの大元の原因は何かということを探ることが大事です。
なぜ風評被害が起こってしまったかという根本を見ていくと、大きな自然災害やパンデミックなど、人知を超えるものや人の力ではどうしようもないことや事件に人々が巻き込まれたことから始まっているものもあります。
こういった事故や事件は避けられないものなので、しょうがありません。
その後、間違った情報やデマが拡散されるところが問題となりますので、次からは人災とも呼べる、人間が「風評被害を起こしてしまう」原因について列挙します。
原因②発信側と受信側の心理
マスコミなど、情報を発信する側もキャッチーで、視聴者や読者の気を引きたいがためにセンセーショナルな、強烈なインパクトのあるタイトルやコピーを使ってしまいがちです。
そして、その情報を受け取る側も何の思考力も働かせずに、そのまま情報を鵜呑みにしてしまうというところがあります。
女性はどうしても母性本能で子供や家族の健康を守ろうとしますから、報道などで知り得た情報を元に食卓からは少しでも疑わしいと思われる食材が消えることとなります。
原因③不特定多数の一般人が情報を発信できる時代
ある特定の記者やジャーナリストでさえ、いわば取材のプロでさえ、時には誤った情報を発信してしまっていたということはあります。
それが今では、不特定多数の世界中の一般人がSNSなどを使って情報を発信することができる時代になりました。
SNSをリア充アピールに使われる分には害がありませんが、情報元のしっかりしていない噂レベルのものを、あたかも真実であるかのように素人が発信できる時代は、風評被害を生み出しやすい環境であると言えます。
原因④フェイクニュース
今や、フェイクニュースは流行語と呼ばれるようにまでなりました。
フェイクニュースとは、虚偽の情報で作られたニュースのことです。
フェイクニュースというと、「フェイク」と「ニュース」というまるで相反する意味合いの言葉をつなげているかのように見えますが、そもそもニュース=真実とは限りません。
ニュースの意味を辞書で調べると、新しく一般にはまだ知られていないできごとや情報、その間の人や事物の消息、というように掲載されています。
ニュースが全て真実だとは限りませんし、逆に世界中の真実がニュースとして報道されているかといえば、それも違います。
特に、今の日本のニュース番組はどれもワイドショー化しています。
そのような中でもフェイクニュースは故意に嘘のウソの情報を流しており、悪質です。
誹謗中傷を目的としたものも含まれるからです。
原因⑤ソース(情報源)を辿って確認しようとしない
残念ながら、現代はどのような情報も疑ってかかる必要が出てきました。
ニュースを受け取る側も、しっかりと頭を働かせて考える必要があり、騙されないようにしなければならなくなったということです。
情報化社会になり、日々溢れる情報量は大変多くなりました。
若い世代においては、スマホでニュースの13文字見出しだけを見て、世の中の情報を得ていると言われています。
そこに真実があると思ってはいけません。
情報を「分かりやすく」伝えるということと、「簡単に省略して」伝えるということは同じであると思ってはいけません。
分かりやすく正しく伝えようとすると、情報や説明は自然と長くなるはずのものです。
キャッチーなタイトルだけでニュースを知ったような錯覚に陥る人が増えたことも、風評被害が増えやすい環境になってしまった一因と言えます。
ニュースは、確かなソースがあるものなのか確認することが必要な時代となりました。
風評被害にあった際の対策
対策①掲示板管理者へ報告相談
風評被害にあった際の対処法も、その被害の種類や規模(個人・企業・地域)によって取るべき手段は違ってきます。
まず、個人や企業がネット掲示板などで、誹謗中傷など被害を受けた際の対処法です。
掲示板サイト等において、特定個人のことを誹謗中傷したり脅迫したりしている内容、或いは一企業のことに関して根も葉もないデマを拡散する情報、これらに対してどのような対処法があるかです。
まず、このような書き込みを見つけたら、URLとできれば文章内容全体をコピペやスクショで保存して、証拠を確保することです。
その上で、掲示板の管理者へ通報と削除依頼をします。
投稿者を特定したり、書き込みが削除されたりするかどうかは確約はできないでしょうが、これまでにもこのような報告から実際に特定に至り、逮捕者が出たこともあります。
非がないのであれば、泣き寝入りすることはありません。
対策②プロに任せる
こういった風評被害というものがあるということは、これを解決すべく動くことをなりわいにしているプロもいます。
弁護士ももちろんそうですし、リスクコンサルタントサービスなるものもあるようです。
そうなる前の事前の対策から、起こってしまってからの事後の対応までをプロに任せるという方法です。素人にはできることは限られてしまいます。
対策③公的権力に頼る
震災後に福島県で起きたような風評被害は、個人や企業レベルでは全くどうにもできません。福島県という自治体や行政でもどうにもできなかったくらいです。
大阪のO157の騒動の時にも、当時の厚生大臣菅直人氏が、実際にカイワレを食するところを全国に報道で流してパフォーマンスすることで、事態の収束をはかろうとしました。それが効果があったかどうかは分かりませんが、一地方がこれをやっても効果は得られません。
このように、一地方を巻き込んだ規模の大きな風評被害は、国に動いてもらわないと、どうにも解決できない問題です。
社会心理的に風評被害が起こるのは避けられない?
風評被害が起こらないように様々な研究や心理学者によってデータ化や公式化など、日々努力はされています。
風評被害や噂を、「重要度×あいまいさ」という公式で表した社会心理学者もいます。
しかし、特にこの日本においては社会心理的に風評被害が起こるのは避けられないとも言えます。
日本には「空気」というものがあります。空気を読むとか、空気が変わるとか、空気が包み込むとか、空気に流されると言います。あの空気です。
空気を読めない=KY=だめな人、といったような独特の風潮がある日本において、皆が垂れ流して信じ込んでいる情報があったとして、その「空気」が包み込んでいる中に、自分だけが違うと言って「水」を差すようなことが大変しにくい世の中になっています。
また、主婦が少しでも放射線が高いと噂のある地域の野菜や、BSEの疑いが少しでもある牛肉を避けたいという思いは、自分の大事な家族の健康を守りたいという優しさから来ているものですので、これを完全否定してしまうこともできません。
風評被害というものは、完全になくすことはできなくても、少しでも被害が少なくなるように事前と事後の対応が非常に大事なものなのです。
風評被害とは?意味や使い方、原因!風評被害の実例一覧や対策!のまとめ
ここまでご紹介してきましたように、風評被害には必ず原因があります。
原因があるということは、ここを断つことができれば事前の対策が可能です。
また、風評被害が起こってしまった後でも、きちんと素早く対処することで被害を最小限に食い止めることもできます。
私達は、正しい情報と誤った情報とを見分ける力を必要とされていて、見分けるための努力が日頃から必要なのだと痛感させられます。
SNS時代に生きる私達に課せられた課題です。