東京弁がある?
東京にも地方都市と同じように、その土地独特の言葉があります。
東京弁と呼ばれるものですが、テレビなどで有名人が使っているのを見聞きしていますので、特にわからないということはありません。
古くから東京で使われてきた言葉もあれば、現代の若者言葉もありますので、時間軸的に幅広く見るとたくさんあります。
また、山の手や23区だけが東京ではなく、離島の方言も含んだりしますので、東京弁と言う定義は範囲的にも意外と広いものです。
東京弁と標準語は違う?
東京弁と標準語は厳密には違います。
標準語は、首都である東京の言葉が大元になっていると思われますが、語彙や発音などの面で異なるものも多数です。
東京弁と呼ばれるものは、家康の時代から江戸方言として使われていたものが前身で、もちろん元々の土着の言葉もありますが、家康ゆかりの三河方面(愛知県や静岡県)からの影響なども受けてきました。
近年は、近隣県の言葉の影響も受けています。
東京弁とは、人々の会話で使われてきて、その土地で定着したものです。
これに対して、標準語と言うのは人工的に作られたものです。
共通語とも呼ばれますが、国家が進めた政策によって整備された言葉と言えます。
NHKのアナウンサーが話す言葉が、もっとも美しい日本語の共通語であると言われています。
有名な東京弁一覧
東京弁として有名なものとして、以下の5つをご紹介します。
- まっかちん
- 水菓子
- やっちゃば
- 宵っぱり
- やにさがる
それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。
有名な東京弁①:まっかちん
冒頭部分で、東京弁はテレビで見聞きしている分、分からない言葉はほとんどないはずとご紹介しましたが、その中で一番伝わらないであろう言葉が「まっかちん」です。
これ、ザリガニのことです。
本来は、赤みが強いアメリカザリガニのことを指して呼んでいたらしいのですが、東京の友人の使い方を見ていると、今はザリガニ全般をマッカチンと呼んでしまっています。
有名な東京弁②:水菓子
これも東京以外では恐らく通じません。
東京でも、今の若い子には通じないかもしれません。
これは江戸時代から使われていた言葉らしいのですが、水分の多い果物のことを指して、こう呼んでいたそうです。
水ようかんのような、夏の和スイーツを想像するかもしれませんが、全く違います。
有名な東京弁③:やっちゃば
これも東京以外では聞いたことがありません。
青物市場のことを、「やっちゃば」と言います。
私は当初、「野菜」が訛って「やっちゃ」になったのかと思っておりましたが、これは競りの時の掛け声が「やっちゃやっちゃ」というものだったことから、「やっちゃ場」と呼ばれるようになったものだそうです。
「やっちゃ」は、事がうまく運んだ時や、驚いた時などにも使われていたといいますが、今では「やっちゃ」も「やっちゃば」も周りでは聞いたことがありません。
有名な東京弁④:宵っぱり
宵っぱりは、夜遅くまで起きていること、またそういった習慣のある人のことを指して言います。
いわゆる、夜更かしですね。
漢字では「宵っ張り」と書き、「宵っ張りの朝寝坊」という言葉もあるくらい、日本語として定着しているとも言えますが、東京の人の方がやはりよく使います。
有名な東京弁⑤:やにさがる
やにさがるとは、漢字で「脂下がる」と書きます。
これも辞書に載っているので、日本語として定着しているものです。
特に男性が気取って構えたり、得意になってにやにやしたりする様を「やにさがる」と言います。
美人を見たり、或いは女性に囲まれたりしてにやにやしている様にも使います。
「やに」はタバコの「やに」のことで、やにがキセルの吸い口の方へ下がってくるようにしようとすると、雁首を上に向けて反り気味にキセルを咥えることになりますが、当初はこの様子を指して「やにさがる」と言っていました。
下町特有の東京弁一覧
東京弁の中に含まれるのですが、東京の下町特有のものを5つご紹介します。
- そんかし
- もうせん
- しゃっこい
- しんぺえすんな
- けえる
一つずつ意味を押さえながら見ていきましょう。
下町特有の東京弁①:そんかし
「そのかし」や「そんかわし」とも言います。
「その代わり」という言葉が、東京下町では「そんかし」になります。
「そんかわり」となったものが、「そんかわし」となり、「そんかし」と変化しました。
「その時」を「そん時」と言ったりしますから、似ている例はたくさんありますね。
「ぴったり」を「ぴったし」、「ばっちり」を「ばっちし」と言うように、「り」が「し」に変わることも特に珍しいことではないようです。
下町特有の東京弁②:もうせん
「もうせん」という言葉は、東京以外ではなかなか使う人がいないのではないでしょうか。
漢字では「もう先」と書いて、意味は「ずっと前」とか「以前」という意味です。
先述の「そんかし」もそうですが、江戸っ子は気が短くて長々と喋らずに縮める傾向があるのだと言われます。
「○○なんだって。知ってた?」と聞かれた時に、「もう先(せん)から知ってるよ!」と答えるのが面倒くさいので。「もうせん!」と言うようになったそうです。
下町特有の東京弁③:しゃっこい
これは、「冷たい」という意味です。
「ひやっこい」という言葉が、江戸っ子特有の「ひ」から「し」に変わったものです。
東京以外でも、北海道や青森など北国の寒い所では「しゃっこい」というそうです。
男性女性問わず使います。
下町特有の東京弁④:しんぺえすんな
これは「心配するな」という意味です。
「すんな」のところは、他の地方でも聞かれることがあると思うので、なんとなく分かるでしょう。
「心配」が「しんぺえ」のように、二重母音のaiが「エー」という伸ばす音になるのは、東京の方言特有のもので、他にも色々と見られます。
例えば、「甘い」は「あめえ」になりますし、「行きたい」は「いきてえ」になります。
下町特有の東京弁⑤:けえる
東京下町では、「帰る」は「けえる」になります。
上述の二重母音のaiがエーになるパターンに似ています。
これは、二重母音のaeが、エーという伸ばす音になっています。
東京以外でも、茨城や山梨、岡山でも「けえる」という方言があるようです。
東京下町では、これ以外にもoiという二重母音がエーとなるパターンもあります。
「遅い」を「おせえ」と言ったりします。
岡山出身の芸人、千鳥ノブさんも「おせえ」と突っ込んだりしますから、やはり意外と岡山弁と似ているところがあるようですね。
元々都があった京都の言葉が、イントネーションが一番豊富で難しい言葉であり、そこから遠ざかるにつれてイントネーションが崩壊していくといいます。
京都から東西逆方向にでも、同じくらい距離が離れると不思議と似たような方言があるのはそのためだとも言われています。
東京弁を他県の人が使うと気持ちが悪い?
これは、東京弁に限ったことではないですが、地元以外の言葉を無理に使うと気持ち悪いものです。
関西以外の人が関西弁を使っていると気持ち悪いのと同じです。
特に、現代の東京弁はテレビで有名人が使っているものですから、地方の人間からすると憧れのようなものがあって、使いたくなることもあるかもしれませんが、言った本人もむずがゆくなります。
私は関西出身で、「マジで?」のイントネーションが「ジ」のところを強く読むのですが、東京に移り住んでしばらくして、初めて自分の口から「マジで?」と「マ」のところを強く読む東京弁アクセントになった時には、さぶいぼが出ました。
東京の人は意外と寛容なので、他県の人が東京弁を使っても何も指摘したりしません。
関西人は東京弁に厳しい?
関西人は東京弁に厳しいです。
お笑い番組などを見ていると顕著です。
関西ローカルの番組に東京弁の芸人さんが来ても、全くと言っていいほどウケません。
おぎやはぎさんが、第一回のM-1決勝で大阪会場の採点が異常に低く、翌年からルールが変わったということさえありました。
関西人が東京弁を使う人がいけ好かないというのは、やはり関西が東京に負けているからであり、引け目を感じているからであり、一方的にライバル視しているからです。
東京の方は明らかに全ての面で勝っているので、まるで相手にすらしていませんし、関西弁に寛容であるどころか、むしろ「面白い!」と好感を持つくらいです。
関西の人間が、東京に出てしばらくして関西に戻り、ちょっとでもイントネーションが東京弁のものが口から出ようものなら、「何かぶれとんねん!」と総ツッコミに合います。
若い世代の方が意外と寛容です。
東京弁をかっこいいいと言ったり、すんなり受け入れたりする体勢が、今の関西の若者にはできています。
東京弁と標準語は別物であると考えよう
関西や九州など、たとえば地方の人がふざけて「○○じゃん!」などと東京弁のマネをしていると、「なんで標準語やねん」という間違った指摘をしたりすることがあります。
正確には、東京弁と標準語は違うものであると理解しましょう。
ビジネスにおいては、正しい標準語の敬語を使いこなせるように注意しましょう。