生活保護受給の条件
生活保護を受けるにはどのような条件が必要なのでしょうか。
生活保護受給には、分かりやすくすると以下の4つの条件があります。
- 資産を売却しても生活ができない
- 働くことが難しい
- 社会保障制度を活用しても生活できない
- 家族や親せきを頼れない
では、それぞれの条件について詳しくみていきましょう。
生活保護受給の条件①:資産を利用しても生活ができない
生活に明らかに足りる現金がある場合はもちろんのこと、本人に何らかの資産がある場合、そのままでは生活保護を受給することではできません。
「売却や解約を行い現金化して生活費に充ててから、生活保護の申請をしてください」というのが国のスタンスです。
具体的に資産として見なされるものは、一定額の貯金や土地、家屋、自動車、解約金が発生する保険などです。
有価証券や美術品といったものも、市町村の生活保護担当部署が価値があると認められれば、売却することがあります。
なお家屋については例外となる条件があり、住むために建てられたものであれば、豪邸でないかぎり売却する必要はありません。
住む場所を失ってしまっては、生活保護の目的に反してしまうためです。
生活保護受給の条件②:働くことが難しい、または低収入
病気やケガ、障害を理由に働けず無収入となっていれば生活保護を受給することができます。
なおよくある誤解として、働いている人は保護を受けることができないというものがありますが、厳密にいうと間違いです。
生活保護では最低生活費という考え方があり、働いている収入が一定の基準以下であれば受給することができます。
ただし、まったく働いていない人と同じ金額がもらえるというわけではありません。
給料から勤労控除を引いた額を最低生活費から引いた額が支給されます。
ちなみに勤労控除とは、給料から一定の基準を元に金額をマイナスし、保護費から差し引かれる金額を抑えてもらう仕組みを言います。
なお、保護費として実際にもらうことができる正確な金額は、お住まいの地域や家族構成などによって違いがあるため、最寄りの役所へ問い合わせることをおすすめします。
生活保護受給の条件③:社会保障制度を活用しても生活できない
年金や雇用保険、傷病手当金を受け取っていたとしても、国が定める最低生活費よりも下回っていれば、保護を受けることができます。
もちろん何らかの手当が一切もらえないという状況であっても受給できます。
注意点としては、働いて収入がある場合と同じように、年金や手当などの収入があると、金額に応じて保護費が減額される点です。
特になければ満額で支給されますので、安心して生活の立て直しができます。
生活保護受給の条件④:家族や親せきを頼れない
生活保護では、経済的に頼れる家族や親せきがいれば、積極的に支援をお願いすることを条件の1つとしています。
実際、生活保護を申請すると調査の一環として、役所から家族と親せきへ金銭的な援助ができないか問い合わせることがあります。
ここで援助が断られ、先ほど説明した3つの条件をクリアしていれば生活保護による支援が開始されます。
また、親戚からの支援を受けることができたとしても、最低生活費よりも下回っている場合は、足りない部分を受給することができます。
生活保護受給者の貯金の上限は?過去の判例は?
生活保護は、あくまでも生活が困窮した方に最低限の生活費を支給する制度であるため、貯金することを考えていない制度です。
しかしながら、生活保護を受給している状態であっても、生活に必要な範囲で、ある程度の貯金ができる場合があります。
ただしこの「生活に必要な範囲である程度」がどれくらいの金額であるかは、各地域の福祉事務所とケースワーカーの判断に委ねらえており、具体的な基準がないのが現状です。
あえて目安を言うと、その人に設定されている最低生活費の半年分未満であれば、貯金が許されるというものがあります。
なお生活保護と貯金に関係した裁判がいくつか行われています。
その判例を見ていくと、将来かかるであろう介護や入院費を賄うために貯めた80万円の貯金が認められたケースや、将来に備えて学資保険に貯蓄した45万円の貯金が認められたケースがあります。
生活保護受給者は正当な理由があれば貯金しても良い?
基本的に貯金することは認められない生活保護ですが、生活の維持や本人の自立を助け、正当な理由のある貯金であれば認められることがあります。
代表的な例では、生活保護を受けている世帯の高校生が稼いだアルバイトの給与を貯金に回すというものがあります。
国による通知がある前までは、高校生が稼いだ金額に応じて保護費を減額していました。
しかしこれでは子供たちが将来に備えることができず、親の貧困を引き継ぐ形になってしまいます。
そこで就職や進学などを目的にし、ケースワーカーが承認した場合に限って貯金が認められることになりました。
そのほかの例では、冷蔵庫や洗濯機など生活に必要な電化製品を購入するためのものや、介護や入院費用に備えた貯金が認められるケースがあります。
貯金をしている人も生活保護を受けられる?
先ほど生活保護を受ける条件で紹介した通り、何らかの資産がある場合は積極的に活用しなくてはいけないため、貯金がある人は原則として保護を受けることはできません。
しかし残りの貯金が1ヶ月も持たない、ほぼ0円であるという場合があるでしょう。
そこでそういった方のために、少額の貯金しかなく、他に活用できない資産がない場合であれば、保護を認める判断がなされています。
ここで厄介な話となるのが、少額の貯金はいくらまでなのかという問題です。
こちらも金額について具体的な基準はなく、各地域の生活保護担当部署の判断に委ねられます。
とはいえ目安がないわけではなく、お住まいの地域で定められる最低生活費の半月分であれば、保護を受けられる可能性があります。
生活保護受給者が貯金を隠しているのがばれるとどうなる?
生活保護を申請する時や受給中に貯金をした場合は、役所に申告することが義務付けられています。
また、役所も受給者の口座を定期的に調査しています。
もし申告をせずに隠してしまうと自身に不利益が生じてしまいます。
最初に挙げられるのは、受け取った保護費の返還です。
全てを返還するわけではなく、隠していた貯金から一定の控除額を引いた額が返還する保護費となります。
しかし、あまりにも貯金額が大きい場合は全額返還が必要なこともありますので、注意しましょう。
次に挙げられるのが、生活保護そのものの停止や廃止です。
多額の貯金がある場合は、生活保護を受ける必要がなくなり、保護のための条件を満たせなくなるため、役所の判断で一時的に支給が停止されます。
場合によってはそのまま生活保護が解除され、貯金を使い切った後に再申請という流れを辿ります。
最後は逮捕です。
特に事情がないのに故意で貯金を隠し続けると、判明した時に役所が警察に通報する可能性があります。
これはかなり悪質だと判断されたケースに限るため、よほどのことがない限りは起こりませんが、リスクがあるということは認識したほうが良いでしょう。
生活保護受給者が貯金してはいけない理由
貯金に対して制限が多い生活保護ですが、その理由は制度の目的にあります。
生活保護は最後のセーフティーネットと言われるとおり、本当に生活がこのままでは成り立たないという方がすがる最終手段です。
そのすがっている人々を助け、必要であろう「健康で文化的な最低限度の生活」を送るためのお金を支給するのが生活保護の目的の1つとなっています。
そのため、保護費を削って貯金をするという事は生活費を削って過ごしているということになります。
そうすると制度が目指す目的から外れて、お金を支給することになってしまうため、貯金を許すことは難しいわけです。
生活保護受給者が貯金できないのはおかしいという意見も
家庭の状況により異なりますが、生活費以外でも何かとお金が必要です。
少額であれば家計のやりくりでなんとか捻出できますが、どうしても必要で一気に出費をしなければならないとなれば、貯金を切り崩すことになるでしょう。
しかし生活保護を受けていると、認められる理由がない限りは貯金を認められず、保護費を使い切る状況になりやすくなります。
そうなれば、生活保護を脱出するための活動ができず、いつまでたっても自立できない状況が出来上がる可能性があります。
以上のことから、貯金を制限している今の制度はおかしいのではという意見があります。
生活保護受給者の貯金については担当者次第
いかがでしたか?
結論を言えば、生活保護の貯金をすることは許されていますが、金額や目的に制限が入ることがお分りいただけたでしょう。
そして実際の貯金が許されるかどうかの最終的な判断は、市町村の担当者次第です。
何か貯金したい大事な目的がある、あるいは既に貯金されている方は、無駄にしないためにもケースワーカーと話し合うことをおすすめします。