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2018/06/19

金融システムの無尽とは?その仕組みやトラブルなど

鎌倉時代に助け合いの精神から生まれたという「無尽」。この独特の庶民による金融システムは、銀行や保険といった金融サービスが発達した現代でも、一部地域で根付いています。この日本独特の金融システムが生まれた背景と、仕組み、メリット、デメリット、そしてトラブルや違法かどうかなどをご紹介します。

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「無尽」とは?その仕組み

東日本では「無尽講(むじんこう)」、西日本では「頼母子講(たのもしこう)」、沖縄では「模合講(もあいこう)」と呼ばれています。
とくに山梨県では、現在でも無尽が生活に密着しています。

無尽とは、気の合う仲間などが集まって、月に1回程度、食事会や飲み会を行い、親睦を深めることです。
と同時に、食事代とは別に、みんなでお金を出し合って、掛け金を募ります。

無尽団結

集められた掛け金は、無尽参加者のひとりが受け取って、その使い道は受け取った人の自由です。
貯金するのもいいですし、買い物に使ってもOK。10人のメンバーがいたら、ひとり1万円を集金したとして、10万円を受け取ることができます。

ちょっとした臨時収入的な感じです。
ローテーションで受け取る場合と、入札する場合など、グループや無尽の目的などによって、さまざまです。

冠婚葬祭や事業の資金繰りなどで、急にお金が必要になったとき、銀行から借りるよりは、ずっとスピーディーにお金を工面することができます。

入札する場合、例えば、10人のメンバーで積立金が1万円だとします。
1回目の会合で受け取る権利を得たい人は、入札のときに1万1,000円とすると、次の会合からはずっと1万1,000円を会費として納めなくてはならないというルールが適用されます。

まだ受け取っていないメンバーは、1万円のまま。そして1回目の受け取った人は、1万1,000円支払うことになるので、2回目に受け取る額は10万1,000円となります。
このようにしていくと、**最後に受け取る人ほど大きな金額を受け取ることができて、得をするという仕組みです。

**つまり「利息」を受け取ることができます。

現在は、こうした拠出金や掛け金なしで、集まる無尽が主流になっています。それでも人と人との絆、地域の情報交換、商売上のつながりなど、他では得られないメリットがたくさんあるので、無尽はやめられないという人が多いのです。

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無尽が生まれた経緯と歴史

無尽 友達

現在のような西洋型金融システムが確立したのは、明治以降のことです。それまでは、無尽が金融システムの主流でした。

現代と違って、昔の人は村単位での生活を非常に大切にしていました。当時は、飢饉などの有事があれば、お互いに助け合わなくては生きていけません。

もともと無尽は、困窮に苦しむ人を助けるため、親せきや知人、地域の人たちが寄り集まって、お金や物を出し合うという相互扶助の精神から始まったものです。無尽は、こうした困窮者を救って、共同社会を維持するため非常に大きな役割を果たしてきました。

無尽は、災害や病人が出たときの困窮者の救済「相互共済的金融制度」として機能していました。ところが、徐々に「事業振興を支援する」機能も出てきました。これは今でいうクラウドファンディングのようなものです。

たとえば、何か商売を始める、あるいは商売の規模を拡大するという場合、自分の資力以上の事業を行う場合に、その資金を調達し、さらに資力に見合った返済を行っていくという役割です。このように無尽は、地場産業を支え、地域の経済を動かしてきた大きな原動力にもなっていました。

さらに、無尽には、お金を融通するという機能だけではありませんでした。
・冠婚葬祭など、急にお金が必要になったときの「貯蓄・融資」機能。
・病気で働けなくなったり、大切な家畜が病気で死んでしまったりしたときの「保険」機能。
・新たな商売の資本金にする「投資」機能。

このように、現在の「銀行」「保険会社」「証券会社」がひとつになったものが無尽と考えていいでしょう。現在の地方銀行や信用金庫には、無尽をベースとした金融機関も少なくありません。

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無尽のメリット

メリット①お金を借りるのに担保や保証人が要らない

無尽で拠出金を集めている場合、そのお金を使わせてもらえる権利があります。たとえば、事業主の場合、必要な機械を購入するための投資金として。あるいは、新しい取引をするため、急に資金が必要になったときです。

また、個人的に新車を購入するときなど頭金として無尽のお金を使えば、月々のローンの金額を抑えることができます。

銀行でお金を借りるには、いろいろな書類を提出して、担保や保証人をつけなくてはなりません。それは、少なくても1ヶ月以上かかるケースもありますし、何よりも煩雑です。

その点、無尽では落札した人、あるいは希望した人がそのお金をどのように使ってもいいことになっています。使い道自由で、しかも担保や保証人ももちろん必要ありません。

メリット②安心して貸し借りができる

お金のやり取りは、とても難しいものです。相手を信用していなければできるものではありません。しかし、無尽の場合は、もともと小さな部落単位で行われてきました。一族同士、縁続き通し、顔見知り同士といった具合です。

そのため、仲間内でお金を持ち逃げするなどの裏切り行為は、なかなかできるものではありません。もし、あってもその責任の持っていく場は分かっています。そのため、お互いに安心して貸し借りができます。
**
現代の無尽も、とくに拠出金があるような場合には、
紹介した人が責任を持つ**というのが暗黙の了解になります。もし、一巡する前にお金をもらったまま参加しなくなってしまったら、紹介した人が穴をあけた分を支払わなければなりません。

メリット③人と人のきずなやネットワークが生まれる

たとえ拠出金を積み立てるシステムではない無尽であっても、ひとつの目的で大人が定期的に集まる会です。そのきずなは、強い結びつきを生みます。

現在のソーシャルネットワークと違って、顔と顔を実際に会わせて歓談したり、飲んだり食べたりするのが無尽です。そこには、地域ならではの団結力があります。

現在は、共通の趣味を持った人たちの集まり、同じ高校の友人同士の集まり、同じ商店街の人たちの集まりなどいろいろです。

さらに、無尽に入ることの大きなメリットとしては、普段顔も合わすことのないいろいろな人とのネットワークが作れるということです。中小企業の社長さん達が、無尽を通して新たな顧客や仕事を紹介してもらうなど、ビジネスチャンスがそこにはあります。

そんな無尽に若い人が参加できれば、さまざまなシーンで引き立てられたり、助けてもらえたりするかもしれません。今でいう、「異業種交流」というのも、無尽ではよくあることです。

メリット④婚活ができる

昔から、無尽は男女の出会いの場でもありました。その流れを汲んで、今でも無尽をきっかけに交際を始めたり、結婚したりするケースがけっこうあります。

無尽の場合、そこに参加する人の人となりやバックボーンはハッキリしています。「地縁」「血縁」を大切にする土地ならではですが、人生を左右する結婚相手を見つけるのには、無尽ほど確実で安心な出会いの場はないといえます。

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無尽のデメリット

デメリット①面倒くさい

無尽は、毎月1回程度、場所と時間が決められており、出席しなくてはなりません。拠出金を集めている無尽では、もし都合が悪くて出席できない場合でも、必ず拠出金は当日持っていくか、誰かほかのメンバーに頼んで立て替えてもらうかしなくてはなりません。

このような面倒くささが、現代の生活習慣に合わずに、徐々に無尽が廃れていった原因のひとつになっています。たとえば、いくつも無尽に入っている人は、スケジュールのやりくりだけでも大変です。最近では、こういった面倒くささが嫌になって、無尽への参加を敬遠する人が増えているそうです。

デメリット②負担が直接参加者にかかる

無尽は、参加者が拠出金、いわゆる掛け金を払わなくてはなりません。それを参加者の人数分まわして、一巡して終了となります。それで公平に皆がお金を受け取ることができます。

しかし、途中でひとりの参加者が掛け金を支払わなくなる事態になると、それは直接参加者の負担になります。このデメリットを担保するために、前もって「親」を決めておいて、その親が参加者の掛け金支払いを保証。もし、払われなければ催促をしたり、取り立てを行ったり、最終的には自腹で立て替えたりしなければなりません。

このように、法律などで保護されていない民間の融資システムなので、もしものときには、自分たちの負担となってしまう可能性がゼロとはいえません。そのため、*参加者の選定のハードルは高いものになります。

デメリット③途中退場はNG

知り合いに誘われて、気軽に参加した無尽だけれど、人間関係や雰囲気など、何となく自分に合わないなと感じて途中でやめたい。あるいは、仕事の関係で遠くに転勤しなくてはならないといったこともあるでしょう。しかし、サークルと違って無尽の場合、途中退場、あるいは卒業は基本的にNGです。

メンバーが10人の場合は、10人が一巡してから。もし、どうしても途中退場したい場合には、次の人が増えて分割方法を決めるときにしっかりと清算しなくてはなりません。

無尽は相互互助が基本ですから、誰かがもらい得することや、払い損することがあってはいけません。そのため、無尽をやめたいときには、出席をやめるだけでなく、お金の清算をして「立つ鳥跡を濁さず」の精神が大切です。

デメリット④銀行で借りるよりも高い利子を払う可能性も

無尽のシステムはいろいろあります。順番に集まったお金をもらえる場合もあれば、入札でもらえる場合もあります。入札式の場合、もし絶対に落札したい理由のあるメンバーが2人以上いるとすると、入札額はどんどん上がることになります。

本来は、緊急時の相互扶助としての役割を果たす無尽というシステムです。しかし、入札式になると銀行からの借り入れよりも、利息が高くなって、結局はサラ金並みの利息が付いてしまうこともあります。

そのときは、無尽の積立金によって何とかしのげても、毎月の利息が重荷になって、無尽の会費が払えなくなってしまうということもあるので、「藁をもつかむ」状態の人は、事前に事情を「親」となる人に話を通しておいて、スムーズな入札をする、いわゆる「談合」の必要があります。

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無尽でのトラブル

無尽 貯金箱

①人間関係でのトラブル

無尽は、人と人とのつながりで成り立っているシステムです。ある意味で「濃い関係」が求められます。そのような組織の中で、いったん人間関係に亀裂がはいってしまうと非常に面倒なことになります。

そのような事態にならないように、周りに気を遣う必要もあり、それがストレスになってしまうという人も多いようです。無尽は人間関係でトラブルがあっても、なかなか抜けられないこともあります。

②金銭面でのトラブル

拠出金や掛け金を設けている無尽の場合、金銭トラブルはどうしてもついて回ることです。参加者が、持ち逃げしてしまうことや「親」が持ち逃げしてしまう危険性も場合によってはあります。

地域のきずなや密着性が失われつつある昨今、もしかすると昔よりもこうした危険性は増しているのかもしれません。無尽での金銭トラブルは、お互いの信頼感を失うことになり、無尽の消滅につながります。

③責任問題

無尽に参加するためには、既存メンバーの推薦が必要となることがほとんどです。無尽は、SNSのように誰でもお友達というわけではないのです。
無尽に参加するためには、経済的なことや社会的地位はもちろんですが、人間性や信頼感などがとても重要視されます。しかし、それを証明するものは、紹介者に頼るしかありません。

そのため、紹介者は、実質的に新たな参加者の後見人という責任を負わなくてはなりません。もし、紹介した人の行動やお金のトラブルがあった場合、その仲介役としての責任が発生することが暗黙の了解になっています。

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無尽(頼母子講)は違法?

銀行を通さない「お金の貸し借り」である無尽や頼母子講は法律的に違法なのでしょうか。結論から言えば違法ではありません。

よく比較されるのが、同じく民間で行われている「ネズミ講」です。ネズミ講の場合は、金銭の配当だけを目的にするシステムです。最初に始めれば始めるほどもうけが高く、末端の会員は損をするという仕組みになっているため、法律では違法とされています。

そもそも、ネズミ講は永遠に会員を増やしていかなければ、破綻するシステムになっています。それに対して、無尽は最初に参加人数を決めてからの発足が基本です。満期になればその時点で解散になります。ネズミ講のように、無限に増えることがありません。

ネズミ講は、増やさなければ破綻するため、手当たり次第に知り合いを勧誘して被害を広げてしまうため、人間関係を破綻することにつながります。そのため、ネズミ講にかかわったすべての人は法律上罰せられますが、無尽や頼母子講への参加は、違法ではありません。

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これからの少子高齢化社会では、無尽システムが注目

少子高齢化を迎える日本。そこでは、あえて相互扶助である無尽のシステムが重要であると注目されています。

隣近所のきずなを深めて、人暮らしの老人の見守りをする機能。子供たちを見守る機能。異業種の交流機能。ネットワークの広がり機能。そしてクラウドファンディング機能。これらすべての機能を含むものが無尽だといわれています。

信頼をもとに成立している無尽には、外部の人間を排除するという「田舎的」イメージもあります。しかし、うまく活用することで成熟した人間関係を築くための重要なヒントが隠されているのではないでしょうか。

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